著者
三尾 裕子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.243-268, 1990-12-30

本論は, 台湾において最も人気の高い<神々>のうちの一つである王爺の分析を通して, 台湾の漢民族の霊魂観の構造的特徴及びそれらと台湾の歴史的社会的背景との関係を検証する。本論で王爺を取り上げたのは, 王爺の分析が, 台湾の漢民族の世界観の特色を理解するのに役立つと考えられるからである。王爺は, 従来台湾人の民俗分類概念といわれてきた3種の霊的存在-<神>, <鬼>, <祖先>-では捉えきれない。その問題点は, 従来の見方があまりに静態的であったために, 霊的存在の変化の可能性やその過程を説明しきれない点にあったといえる。本論では, このような視点の下に, まず従来の王爺研究をふり返る。そして, これらの文献資料及び筆者の調査した王爺信仰及び「迎王」儀礼を通して, 王爺にみられる霊魂の内的構造を分析する。更に, 「王爺」の<鬼>から<神>への変化が, 台湾の歴史的環境のなかで生み出されてきたことを明らかにする。

言及状況

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王爺とは神様の中の一つです。 ただし、台湾の王爺信仰はもともと中国本土から来たもので、中国のとある地域で疫病が流行るのは悪い神様が暴れているのだと信じた民たちが船を造り、その船に王爺の像を乗せて海に流せば王爺が疫病を海に連れ去ってくれると信じていました。 中国からその船を流すと風向きと海流から台湾に流れ着くことから台湾にも王爺信仰が広まったとされています。 台湾では、中国の疫病を連れてき ...

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三尾 裕子「<鬼>から<神>へ : 台湾漢人の王爺信仰について」『民族學研究』55(3)、1990年。https://t.co/1FYGzEH1SL

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