- 著者
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麻柄 啓一
伏見 陽児
- 出版者
- 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.3, pp.212-218, 1980-09-30
本研究は,幼児の法則学習における「劇化」教材の効果を検討したものである。 われわれは,Brunerの提案する劇化装置(dramatizing devices)にさらに厳密な概念規定を与え,学習されるべき事実や法則が一連のストーリーの中で提示されるだけではなく,さらに,それらの事実や法則がストーリーの筋や結末を左右するようになっているとき,これを「劇化」教材と呼ぶことにした。このような「劇化」教材が幼児の法則学習を有効に援助し得ることを調べるのが,本実験の目的であった。 対象児は,平均年齢6歳3か月の幼児48名であり,事前テストの結果から等質な2グループに分けた。一方にはわれわれの作成した「劇化」教材を,他方には非「劇化」教材を与えて,重さの保存の法則を教授した。結果は以下のとおりである。 (1)「劇化」教材で学習したグループ(dt群)は,非「劇化」教材で学習したグループ(nd群)より,事後テストで有意に高い得点をあげた。 (2)再生課題,転移課題とも,dt群がnd群にまさった。 (3)事前テストの成績から対象児を高成績群と低成績群に分けた場合,dt・高成績群とnd・高成績群の間には,事後テストの得点に有意な差はなかったが,dt・低成績群はnd・低成績群より事後テストで有意に高い得点を示した。 (4)教材提示の回数(1回or2回)は,事後テストの成績に影響を与えなかった。 (5)事後テストで,実物を用いて質問する方が,同一事態を絵カードを用いて質問するより,高い得点をあげる傾向があった。