著者
茅本 百合子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.315-322, 2000-09-30

日本語を学習している中国語母語話者(上級学習者)が漢字を日本語で読み上げるとき, その漢字の音読みが母語の中国語の発音に似ていると, 似ていない発音の漢字を読み上げるときより反応時間が短くなった。また, 通常訓読みで読まれる漢字よりも通常音読みで読まれる漢字のほうが反応時間が短かった。これは, 漢字を日本語で読む際にも母語の音韻情報が活性化するためであると考えられ, 中国語音起源でない訓読みも, 音韻情報の一部として心内辞書に収められていることが要因であると考えられた。そして, 異言語間で共用されている漢字という文字にそれらの言語の音韻情報が備わっていることが示唆された。一方, 日本語学習歴がさらに長く, 超上級と言われるレベルに達している学習者は, エラーも少なく, 反応時間は, 日本語と中国語の発音の類似には影響されなかった。

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