著者
西薗 秀嗣 中川 功哉 須田 力 斎藤 勝政
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-26, 1984-02-01
被引用文献数
1 6

アーチェリーのシューティングについて,日本のトップアーチャー2名並びに技術水準の異なる男子大学生アーチャー15名の上肢,上肢帯,体幹筋の筋電図記録,動作分析を行い,以下の知見を得た。1)初心者及び経験5年程度の中級者では,セットアップ,ドローの初期から上肢の放電が著しく,フルドローに入って左右側の筋緊張が不安定な状態でリリースがなされる。これに対してトップアーチャーでは初期から上肢帯,体幹筋の活動が大きく,フルドローでは左右側で均等な強い筋活動がみられた。さらに,フォロースルーで一定時間,筋活動が安定して持続し,合理的な筋の作用がなされていた。2)トップアーチャー2名において,リリースに先行して両側の三角筋肩峰部で筋放電休止期Silent Period(S.P.)が認められ,さらに1名で押し手(左)僧帽筋横部でも認められた。3)大学生アーチャー12名、について,経験年数と成績から上級者,中級者,初級者に分け,三角筋でのS.P.の出現率,潜時,リリース反応時間について検討した紬果,初級者ではS.P.の出現は2名に認められたが出現率は低く,リリース反応1時間は190〜230msecと長く,かつ分散している。上級者では全員S.P.の出現があり,出現率は70〜100%と高く,S.P.潜時及びリリース反応1時間の平均値はそれぞれ,115msec,175msecとなり,しかもばらつきが少ない。4)引き手(右)三角筋のS.P.の出現と同側僧帽筋の活動増強の時期が,特に上級者群でほぼ一致した。この両筋は神経支配が異なり,リリース動作での拮抗筋と考えられず,リリース動作での一連の主働筋と考えられる。これらのことから,アーチェリーのシューティングという複雑な動作で出現したS.P.は,長期にわたるトレーニングによる巧緻性獲得過程にみる一つの合理的な神経筋機構であると考えられる。

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[バイオメカニクス][科学][武術][武道] アーチェリーのバイオメカニクス的研究は盲点であった

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