- 著者
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杉原 厚吉
伊理 正夫
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.9, pp.962-974, 1987-09-15
- 被引用文献数
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12
8
ソリッドモデラにおける最も重要な問題の一つは 図形の交差判定である.図形要素が非常に接近したとき 数値計算の誤差が図形の交差の順序を逆転させることがある.このような誤った判定に基づいて図形を操作すると たとえば立体の表面の表と裏が部分的にひっくりかえったりして システムの暴走の原因となる.これを防ぐために 従来のシステムでは"非常に接近した図形要素は同じ位置を占めているとみなす"という便宜的処理にたよっており 暴走を完全に防ぐことはできていない.本論文では 計算誤差による交差判定の誤りを完全に防止できる多面体モデラの一設計法を提案する.これは 最近 数値計算や計算量の理論などの分野で認識され始めている "有限の桁数で表された原始データを厳密に正しいものとみなすと それを用いた計算結果の符号判定もやはり有限の桁数の計算で厳密に行うことができる"という"新しい観点"を利用したものである.まず この観点からソリッドモデラにおける図形の表現法・操作法をみなおす.そして 多面体を構成する各面の方程式の係数を唯一の基礎的データとみなし すべての図形操作をこのデータにさかのぼって行うことにより 基礎的データの5倍の精度の計算で上の目的を達成できることを示す.また 予備的な計算実験例もあわせて報告する.