著者
中村 滋延
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.24, pp.23-28, 2004-03-04

筆者は、1970年代半ばにミュージック・シアターと出会い、視覚的要素を持つ音楽に興味を持った。視覚的要素は音楽構造にも変化を与え、あらたな表現の可能性をもたらすように思われた。しかし、ミュージック・シアターの実践を通して、演奏動作の視覚的要素としての制約を問題として感じ始めた。その問題を解決するためにコンピュータを用いたインタラクティブ・システムを利用するようになった。このことによって演奏動作が視覚的要素として表現力を増すようになった。しかし、視覚的な表現力としては映像に勝るものはない。そこでインタラクティブ・システムが音響に対してだけでなく、映像に対しても及ぶような作品を制作するようになった。そのような作品を「音楽系メディアアート」と命名した。そうした中で、映像と音響の関係を緻密なままにメディアに固定した作品を「映像音響詩」という名で制作するようになった。視覚的要素は聴覚的要素に影響を及ぼして、音だけでは次への予測が困難な無調性の音楽にも次への予測を可能にし、集中して音の推移を鑑賞者が追いかけていくことを可能にする。

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