著者
米倉 二郎
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.190-196, 1992
参考文献数
10

本編は第27回国際地理学会議(ワシントンD.C.)(1992年8月11日)での発表である。海洋を視座に据えて世界史を区分すれば,古代は地中海時代,中世は印度洋時代,近世は大西洋時代とすることができよう。ウォラースタインによれば,近世は資本主義的世界システムが成立して来た時代で,その中心となった指導国家もスペインからオランダ,ついでイギリスそして19世紀後半から米国へと移ってきた。資本主義経済は50年前後の周期で景気が変動するが今や米国の覇権にかげりが見えてきた。その後継者として日本とECが現れつつあり,このまま進めば2050年位に破局を迎えるであろう。なお資本主義は500年を経過して構造的矛盾に陥り他のシステムヘ転換すべき時であろうという。資本主義世界システムの最周辺を占めてきた太平洋もヨーロッパ列強により発見占領されて世界史の舞台に登場,太平洋戦争によって主戦場となった。その結果植民地は解放され一敗地にまみれた日本が急速に回復し,それに続いてNIES諸国が台頭してきた。来るべき時代は太平洋の時代となるようで21世紀は太平洋の世紀ということができよう。太平洋の世紀が解決しなければならぬ多くの課題の中でここでは太平洋諸島の開発と太平洋地域の非核化について述べる事とする。太平洋諸島は陸地面積は小さいが海洋面積が大きい。同じく島喚国として日本は太平洋諸島の開発に最も多く貢献することができよう。広島,長崎の原爆後太平洋は米英仏などの核開発の実験場となり自然や住民が汚染されてきた。わが国は早く非核三原則を国是としているが太平洋島喚国も1985年に非核条約を締結した。日本はこれら諸国と共に声を大にして沿岸諸国民に非核を訴えねばならぬ。これが来るべき世紀に実現されるならば文字通り太平洋の世紀ということができよう。

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