- 著者
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荒木 一視
- 出版者
- 地理科学学会
- 雑誌
- 地理科学 (ISSN:02864886)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.27-46, 2000-01-28
- 被引用文献数
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2
5
本研究は地方都市に位置するスーパーマーケットの青果物調達戦略の検討から,青果物流動の全国体系に言及するものである。その際,愛媛県松山市のスーパーマーケットA社を中心とした検討を行った。同社の調達戦略では,通年での安定供給を目指した品目に関しては地場の卸売市場から多くが入荷した。その一方,高付加価値戦略品目の調達にあたっては,地場の卸売市場に依存しない独自の調達ルートが重要な役割を果たした。独自のルートとは,小規模の契約栽培,大都市や産地市場からの仲卸業者を使った調達などである。その背景には産地の出荷戦略とともに,現代の青果物流動の全国体系のもつ構造的な問題が存在する。すなわち,大口で高値のつく大都市市場へと農産物が集まり,他方,地方都市では潤沢な供給を確保する上で,取引量の少なさに起因する障害がある。こうした状況下,特に地方都市ゆえに小規模な需要しか見込めないという限界の中で,地方都市の卸売市場とスーパーによって,地方都市の安定して多様な青果物供給が維持されていることは評価できる。そこでは大都市の大規模需要を背景にした青果物の調達戦略とは異なる解釈が必要である。