著者
元木 久
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.503-519, 2004-11

金融市場の規制緩和と強化が同時に進行する、いわば、レジーム転換の経済の中で、金融市場に存在する各種の規制が相互にコンシステントでなければ、金融システムに機能不全が発生するであろう。預金金利の自由化を行うとき、銀行の破綻確率を低下させるために、支払準備率規制と業務分野規制の緩和が同時に行われることが必要であろう。自己資本規制の強化は銀行の貸出比率を低下させるが、破綻確率の低下に繋がらないだけでなく、臨界状況では起死回生のギャンブルに向かわせる銀行行動の変化を引き起こす可能性がある。また、破綻確率に対応した可変的預金保険料率制度は預金受入銀行の存立を困難にし、固定的保険料率制度の場合、単独で銀行経営の健全性を確保することができず、他の諸規制と組み合わせる必要がある。本稿全体で主張したいことは、競争制限的規制を緩和してレジーム転換を進めるとき、自己資本比率のような単一の指標に硬直的に依拠して銀行システムの健全化を目指すならば、マクロ経済ショックに対応できないので、可変的保険料率制度の創設、準備率規制の緩和、自己資本比率の弾力的運用を含む規制の組み合わせが重要であるということである。

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