著者
元木 久
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.229-262, 2009-12-05

本稿ではRockefeller Archive Centerに現存するM.Kaleckiに関する未公表のすべての記録を末尾に付録として収録する。この記録に基づいて既存のカレツキ研究の中にある誤った事実認識を修正すること、さらに、カレツキ全集1)およびその他の資料をも利用して、カレツキがロックフエラー財団のfellowshipによりポーランド出て、オックスフォード大学統計研究所で一時的な職を得るまでの経緯を示すことによって彼の研究継続がロックフェラー財団やケンブリッジ大学の研究者から得た多大の援助に基づくこと、その間の研究成果がカレツキひとりの独創的アイディアよって形成されたのではなく、特にワルシャワの景気循環・物価問題研究所の同僚であるランダウとの共同研究、プレイトの研究成果、L.S. E.でのラーナーの研究成果などを自らの体系形成の中に取り込むことによって形成されたことを明らかにする。
著者
元木 久
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.503-519, 2004-11

金融市場の規制緩和と強化が同時に進行する、いわば、レジーム転換の経済の中で、金融市場に存在する各種の規制が相互にコンシステントでなければ、金融システムに機能不全が発生するであろう。預金金利の自由化を行うとき、銀行の破綻確率を低下させるために、支払準備率規制と業務分野規制の緩和が同時に行われることが必要であろう。自己資本規制の強化は銀行の貸出比率を低下させるが、破綻確率の低下に繋がらないだけでなく、臨界状況では起死回生のギャンブルに向かわせる銀行行動の変化を引き起こす可能性がある。また、破綻確率に対応した可変的預金保険料率制度は預金受入銀行の存立を困難にし、固定的保険料率制度の場合、単独で銀行経営の健全性を確保することができず、他の諸規制と組み合わせる必要がある。本稿全体で主張したいことは、競争制限的規制を緩和してレジーム転換を進めるとき、自己資本比率のような単一の指標に硬直的に依拠して銀行システムの健全化を目指すならば、マクロ経済ショックに対応できないので、可変的保険料率制度の創設、準備率規制の緩和、自己資本比率の弾力的運用を含む規制の組み合わせが重要であるということである。