- 著者
-
藤江 康彦
- 出版者
- 日本教育工学会
- 雑誌
- 日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.4, pp.201-212, 2000
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
4
本研究の目的は,教師による子どもの発話の「復唱」に,教授行為としてどのような意味があるのか,ということを明らかにすることである.小学5年の社会科単元「日本の水産業」の一斉授業(計7時間)を対象に,教師の復唱と後続する発話に着目し,カテゴリーの数量的分析と事例の解釈的分析を行った.その結果,次のことが明らかとなった.(1)教師は子どもの発話に対する応答として,復唱を多用していたが,復唱には,子どもの発話より教師の発話が後続する場合が多かった.(2)教師は教授意図に応じて復唱の機能と形状との組み合わせを使い分け,談話進行の円滑化や子どもの学習の進行に向けた教授行為として運用していた.(3)教師は,復唱を明示的評価の回避,授業進行の主導権の維持や授業進行のテンポの調整など,自らの教授行為の構成のために運用していた.よって,教師の復唱は発話内容としてではなく言語行為として,教授活動上の意味をもつといえる.