著者
崎濱 秀行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.105-115, 2003
参考文献数
28
被引用文献数
3

本研究では,大学生・専門学校生を対象として,文章産出活動に対して持つメタ認知的知識の構造を検討した(研究1).その結果,「伝わりやすさ」,「読み手の興味・関心」,「簡潔性」の3因子を見出した.次に,文章産出スキルの高さにより,メタ認知的知識の重視度合い(メタ認知重視度)に違いが見られるのかどうか,などについて検討を加えた(研究2).各文章を得点化し,上位25%を熟達群,下位25%を非熟達群としてメタ認知重視度に関する群間比較を行った.その結果,熟達群は,「伝わりやすさ」という文章全体に関わる側面を重視していたのに対し,非熟達群は,「簡潔性」という文章の細部に関わる側面を重視していた.ところが,文章産出の際にメタ認知的活動をどの程度行ったと思うかについて自己評価させたところ,いずれの下位尺度においても群間の有意差が見られなかった.一方で,書き手がどの程度メタ認知的活動を行ったと思うか,読み手に評定を求めたところ,全ての下位尺度において,熟達群に対する評定の方が非熟達群よりも高くなった.以上の結果から,文章産出スキル育成の際,書き手に「伝わりやすさ」というメタ認知的知識を重視させるだけではなく,そうしたメタ認知的知識を上手く活用させるためのトレーニングを課す必要があることが示された.

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