著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.p133-147, 1993-02

ここに紹介する『朗詠要抄』は、その奥書の署名から円珠本と呼ばれる朗詠九三首を収録する譜本である。これは、魚山と称される天台声明の中心地大原に伝えられた朗詠譜本という点で貴重であるが、そればかりでなく、その奥書により原本は法深房(藤原孝時)所持本であったことから、藤家流朗詠の流れを伝える一本としても重要な位置を占めている。一方、本書は既に活字本や写真版本として提供されている後崇光院本『朗詠九十首抄』、流布本『朗詠九十首抄』、『朗詠要集』、因空本『朗詠要抄』、陽明文庫本『郢曲』などとともに朗詠古譜として著名であるにもかかわらず、従来まったく本文が公刊されていない。本稿は円珠本『朗詠要抄』の中でも、最善本と目される京都大原三千院円融蔵本を底本として翻刻し、伴せて解題を試みるものである。

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