著者
小野 恭靖
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1-9, 2002-07-10

本稿は中世を中心とする歌謡の世界に歌われた子どもの年齢範囲の規定を目指す論である。子どもは七歳から歌謡に歌われ始め、十三歳までが歌う対象年齢とされたことを指摘した。そしてその年齢は、日本民俗における子どもの概念規定と軌を一にしていることが確認できる。また、「お月さん幾つ、十三七つ……」という童謡に見える「十三七つ」について、十三歳から十七歳までの恋愛対象となる娘のことを指すのではないかとの新解釈を提示することもできた。
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 1 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.63-74, 2009-09

「隆達節歌謡」は安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、高三隆達の節付けによって評判を取った一大流行歌謡である。隆達は大永七年(一五二七)に泉州堺の地で生誕し、慶長一六年(一六一一)に八五歳の生涯を閉じたが、同時代に同じ堺で活躍した町衆は多い。中でも三宗匠と称された茶人の千利休、今井宗久、津田宗及の存在は無視できない。他にも早歌という歌謡に秀でた松山新介がいた。本稿では安土桃山時代の歌謡界をリードした「隆達節歌謡」の心とことばの中に、同じ時空を生きた堺文化圏で育まれた精神、とりわけ堺の茶人たちの「わび」の心が反映されていることを具体的に考えていきたい。"Ryutatsubushi-kayo"became very popular from the Azuchimomoyama era to the early years of the Edo era. They are songs which were sung by Takasabu Ryutatsu who lived in Sakai. In those days three great genius of the tea ceremony, Sen-no-Rikyu, Imai Soukyu, Tsuda Sougyu, flourished in the same place. They thought "wabi"was very important mind in the tea ceremony. In this report it is written that there is similar mind to"wabi"in the words of "Ryutatsubushi-kayo"
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第Ⅰ部門, 人文科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-55, 2013-09

日本語のことば遊びを積極的に活用した俳諧作品があった。その多くは江戸時代初期に貞門と称される人々の間で創作されたが、その一人であった野々口立圃には回文の発句を記した短冊が残されている。本稿はその短冊資料を紹介し、初期俳諧の歴史の中に位置付けることを目的とする。Some haikai (俳諧) made use of Japanese plays on words. Most of them were composed by the Teimon (貞門) group of haikai in the early period of the Edo era. Nonoguchi Ryuho (野々口立圃) was one of the members of the Teimon group. The oblong card in which he wrote the first phrase of the haikai using the palindrome remains now. The oblong card is introduced in this report. It is positioned in the history of the earlier haikai.
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.99-115, 1999-01

日本古典文学に見られる言語遊戯の問題は近年に至り、次第に重要な視点として注目を集めつつある。日本語の言語遊戯は大きく"しゃれ""なぞ""戯語"の三種に分類できる(鈴木棠三説)が、本稿ではそのうち"戯語"を代表する"回文"について新見を交えて整理していきたい。"回文"はその性格から主として韻文の文芸作品において展開を見せたので、本稿での論述に際しては回文和歌・狂歌、回文連歌・俳諧という二項に集約させる形式で述べていくこととする。
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.p133-147, 1993-02

ここに紹介する『朗詠要抄』は、その奥書の署名から円珠本と呼ばれる朗詠九三首を収録する譜本である。これは、魚山と称される天台声明の中心地大原に伝えられた朗詠譜本という点で貴重であるが、そればかりでなく、その奥書により原本は法深房(藤原孝時)所持本であったことから、藤家流朗詠の流れを伝える一本としても重要な位置を占めている。一方、本書は既に活字本や写真版本として提供されている後崇光院本『朗詠九十首抄』、流布本『朗詠九十首抄』、『朗詠要集』、因空本『朗詠要抄』、陽明文庫本『郢曲』などとともに朗詠古譜として著名であるにもかかわらず、従来まったく本文が公刊されていない。本稿は円珠本『朗詠要抄』の中でも、最善本と目される京都大原三千院円融蔵本を底本として翻刻し、伴せて解題を試みるものである。
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.47-56, 2005-09-30

日本のことば遊びの一種に判じ物がある。判じ物は絵と文字を用いて、主として日本語の同音異義によって解読させる視覚的なことば遊びである。その判じ物の資料のうち、同類の名詞を解とする判じ物を一枚摺りの錦絵版画に集成したものがある。それはいわば判じ物の「物は尽くし」資料と言え、今日「物尽くし判じ物」と呼ばれている。「物尽くし判じ物」は岩崎均史氏によって精力的に紹介されている。しかし、近時岩崎氏未紹介の「物尽くし判じ物」二点、また岩崎氏に言及がありながら、写真等による紹介がなされていない「物尽くし判じ物」一点が管見に入り、その,後大阪教育大学小野研究室蔵となった。本稿は従来十分な位置付けがなされていない以上三点の「物尽くし判じ物」を、写真とともに紹介する論考である。
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-116, 2000-01

江戸時代末期に爆発的に流行し、巷間に流布した"判じ物"資料に「もの尽くし判じ物」がある。「もの尽くし判じ物」は動物、植物、食品、調度品、風俗などの部類によるもの尽くし絵であるが、それがいわゆる"判じ絵"で描かれている点に特徴がある。また、「もの尽くし判じ物」は大判の錦絵摺りで、一枚物を基本としたが、二枚から数枚で一組とされた例も見られる。本稿では、「もの尽くし判じ物」を代表する三種の表現手法を取りあげ、それらが一朝一夕に成されたものではなく、日本語のことば遊びの歴史と伝統に基づいたものであったことを指摘する。"Monozukushi Hanjimono", which took the world by storm in the Edo era, is one of picture puzzles. The picture puzzles in "Monozukushi Hanjimono" are classified by subjects such as animal, plant, food, supply and public moral. They are Nishikie, which are color prints. This report treats three kinds of expressions in these picture puzzles, and indicates that their expressions were not made easily but had been made in the long history and tradition of Japanese language.
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ことば遊びにかかわる文献資料の収集を精力的におこない、多くの貴重な資料を収集した。その結果、これまで未紹介であった「鈍字」や「文字絵」にかかわる複数の資料を紹介し、位置付ける複数の論文を発表した。また、幼児向けの絵本『さかさことばのえほん』、中学・高校生向けの入門書『ことばと文字の遊園地』の他、文学作品中に見られることば遊びに言及した『戦国時代の流行歌』を刊行するとともに、多くの講演や講義によってことば遊びについて話す機会を持つこともできた。
著者
小野 恭靖
出版者
日本歌謡学会
雑誌
日本歌謡研究 (ISSN:03873218)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.80-89, 2001-12-30 (Released:2021-03-31)
著者
小野恭靖著
出版者
新典社
巻号頁・発行日
2010
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 1 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.141-145, 2011-02

『当麻中将姫和讃』は現在大阪教育大学小野恭靖研究室所蔵の和讃資料一冊である。この和讃は大和国当麻寺伝来の曼荼羅の縁起にかかわるもので、中将姫伝説に基づいて創作されている。この和讚が注目されるのは、従来紹介されていた中将姫関連の和讃とは内容を異にしている点である。本文には中将姫伝説を収録した一部の江戸期文献と共通する登場人物名が見え、この和讃の成立時期や成立背景をおよそ推定することが可能である。 本稿では従来未紹介の『当麻中将姫和讃』一冊を翻刻し、位置付けを行うことを目的とする。Wasan is the songs that praise Buddism. Among those wasan there are the songs which theme is the legend of Chujou-hime. Five kinds of wasan related to Chujou-hime have been known so far."Taima Chujou-hime Wasan(当麻中将姫和讃)"is introduced in this report. This wasan, which treats the legend of Chujou-hime, was not found.
著者
小野 恭靖
出版者
大阪学芸大学国語国文学研究室
雑誌
学大国文 (ISSN:02882159)
巻号頁・発行日
no.35, pp.p111-125, 1992-02
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.71-98, 1993-09

「隆達節歌謡」は五一九首の歌と五〇種を超える歌本の存在がこれまでに確認される。このことは研究者が「隆達節歌謡」を引用する際に、きわめて複雑な手続きを要求されたことを意味している。筆者はかつて、「「隆達節歌謡」諸本索引」(『梁塵 研究と資料』第二号<昭和五十九年十二月>)を編集し、「隆達節歌謡」の各歌がどの歌本に収録されているかを示したことがあった。本稿では五一九首の歌謡すべてについて改めて校訂本文を作成し、適宜漢字をあて、読点を付して読み得る詞章とした。また、その歌謡が収録される歌本とその位置を略号を用いて示し、諸本索引としての機能を持たせた。本稿は前稿「「隆達節歌謡」諸本索引」に新資料を増補して大幅に改訂したものである。There are 519 songs and more than 50 song books in"Ryutatsubusi-kayo".This means that complicated procedures were needed when reserchers quoted the songs of"Ryutatsubushi-kayo".I have edited"The Index of Ryutatsubushi-kayo"("Ryojin"Vol.2(December,1984))before,and have shown in which book each song of"Ryutatsubushi-kayo "is contained.I collated all the 519 songs and made a text.It is added to the index in this report.This report is a revision of"The Index of Ryutatsubushi-kayo".
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

今年度は昨年度に引き続き、諸図書館・文庫などに所蔵されることば遊び関連文献資料の閲覧調査、及び複製の収集を行った。具体的には国立国会図書館、東京都立中央図書館、早稲田大学図書館、京都大学附属図書館、京都府立総合資料館、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター図書室、大阪府立中之島図書館、大阪市立中央図書館を訪ね、ご所蔵のことば遊び関連文献(写本・版本)の閲覧と複製の収集を実施した。今年度はきわめて多岐にわたることば遊び資料の閲覧が叶った。また、自ら古書店を訪ね、研究費の一部を用いて、貴重な江戸期のことば遊び文献資料(文字絵関係資料、三段なぞ関係資料を中心とした諸種のことば遊び資料)を購求し、大阪教育大学図書館に蔵書として収めることができた。そして、それらの一部については『学大国文』誌に翻刻紹介をし、広く公開を図った。ことば遊び研究に関わるその他の実績としては、高校生向けの啓蒙的な文章を執筆し、大阪桐蔭高等学校発行の教育研究誌『桐』に二度(「回文・倒言・アナグラム」と「早口ことば」)にわたって発表した。また、今年度も、歌謡文学に見られることば遊びの分析を文献調査と並行して行った。中でも昨年度に引き続き、ことば遊びときわめて関連の深い子どもの歌謡(以下、「子ども歌」と呼ぶ)を対象として研究を実施した。この「子ども歌」の研究成果の一端は、医療生活協同組合編『comcom』誌上に連載エッセイの形で発表した(本成果についてはエッセイのため裏面の「雑誌論文」からは除外した)。また、NHKラジオ第二放送「私の日本語辞典」に出演し、「子ども歌の系譜」と題して40分の番組を4本収録した(放送は平成20年4月)。