著者
西岡 純
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.19-36, 2006-01-05

サイズ分画測定法を用いて外洋海域における鉄の存在状態を研究した。その結果, 従来"溶存態"と定義されてきた画分中にはコロイド状鉄が含まれており, 海水中の植物プランクトンによる鉄の利用過程や地球化学的鉄の循環を理解するために重要な画分であることを示した。また, 国際共同プロジェクトとして, 北太平洋亜寒帯域の西部および東部で現場鉄散布実験を行ない, 大気から供給される鉄が他海域より多いと考えられる西部海域においても, 鉄の不足が生物生産を制限する要因であることを明らかにした。さらに, 西部海域が鉄制限海域になるプロセスとして, 供給された鉄が, 速やかに植物プランクトンが利用しづらい形態に変化してしまうことが重要であることを示した。海洋における鉄の生物地球化学的な研究は, 自然海域における生物生産の諸過程を理解するためには欠かせない分野と成りつつある。本稿では, 著者がこれまでに展開してきた, 海水中の鉄の存在状態と鉄が生物生産に果たす役割に関する研究の一部を紹介した。

言及状況

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鉄炭ダンゴによる水質浄化についての実験結果や論文について知りたい。 理論的には、磯焼けとよばれる海の砂漠化を解消するため、酸化鉄を主成分とする鉄炭ダンゴ を海中に散布し、水質を浄化するということである。

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