著者
小松 武志 坪田 敏男 山本 欣郎 阿閉 泰郎 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.521-529, 1997-07-25
被引用文献数
15 33

ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の精巣内でのステロイド合成酵素の局在に関する季節変化を観察することを目的に, 免疫組織化学的観察を行った. さらに, 血清中テストステロンおよびエストラジオール-17β濃度をRIA法を用いて測定し, 免疫染色の結果と比較検討した. 精細管中における精細胞の形態学的観察から, 各材料採取時期を活性期(5, 6月), 退行期(11月), 休止期(1月), 前回復期(3月)および後回復期(4月)に区分した. 血清中テストステロン濃度は精子形成活性とよく一致した季節変動を示した. Cholesterol side-chain cleavage cytochrome P450, 3β-hydroxysteroid dehydrogenase(3βHSD)および17α-hydroxylase cytochrome P450はライディヒ細胞に通年的に観察され, 3βHSD陽性細胞数のみが血清中テストステロン濃度とよく相関した変化を示した. Aromatase cytochrome P450(P450arom)は通年的にライディヒおよびセルトリ細胞で, 5月および翌年の4および6月に精子細胞で, 1および3月に筋様細胞で観察された. また, P450arom陽性ライディヒ細胞数は5月および翌年の1, 3および6月に増加したが, 血清中エストラジオール-17β濃度は特定の季節変動を示さなかった. これらの結果から, 3βHSDはライディヒ細胞におけるテストステロン産生のキー酵素であること, またライディヒおよび筋様細胞由来のエストロジェンはオートクリンもしくはパラクリン的にネガティブフィードバックによってライディヒ細胞の機能を調節していることが示唆された.

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