著者
江村 正一 阿閉 泰郎 陳 華岳
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-16, 2010 (Released:2015-11-18)
参考文献数
5

17種類の哺乳類の喉頭蓋を観察し次の5つの型に分類できた。Ⅰ型:喉頭蓋の上縁が弓状のもの(ケープハイラックス、マレーセンザンコウ、タヌキ、ニホンカモシカ、ヌートリア、ニホンザル)、Ⅱ型:喉頭蓋の先端が尖った三角形を呈するもの(マーラ、レッサーパンダ、チョウセンイタチ、ハクビシン、アライグマ、アブラコウモリ、コモンツパイ)、Ⅲ型:喉頭蓋の正中部に小突起が見られるもの(ホンドギツネ、ジャワオオコウモリ)、Ⅳ型:喉頭蓋の正中部に長い突起が見られるもの(ジャワマメジカ)、Ⅴ型:喉頭蓋の正中部が2分しているもの(カピバラ)。
著者
高橋 奈知子 杉村 誠 鈴木 義孝 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p137-150, 1986-12

ニホンカモシカ腎臓の形態を肉眼的および組織学的に観察し,合成樹脂の注入によってその動脈走行を調べ,次の結果を得た。ニホンカモシカ腎臓は単腎で,外形は右腎臓が豆形,左腎臓は遁走腎で三角形を呈し,割面では総腎乳頭を形成していた。成獣ニホンカモシカの腎重量は左右とも約70gであった。また,大きさの平均は左が7.1×4.8×3.2cm,右が7.1×4.9×2.9cmで,左の方が厚みがあった。左腎動脈は腹大動脈からの分岐が右よりも後位で発し,しかも右よりも長かった。腎動脈は腎門内で前・後枝に分岐し,前枝が腹側に,後枝が背側に偏在していた。また,葉間動脈は一般に前・後枝から各6本,計12本が出ていた。前枝の背・腹側枝の分岐と,背側中核の分岐状態から,動脈分布様式をIa〜d,IIa〜dの8型に想定区分したが,そのうち実存したものは6型あり,なかでもニホンカモシカの最も基本的な型は,前枝が背・腹側枝に分岐し,背側中枝が後枝から出るIIa型であった。被膜に分布する動脈の中には,葉間動脈から分岐して被膜に向うperforating arteryが存在していた。旁髄質の糸球体は皮質表層のものよりも大きく,また糸球体は二半球性,内外二展性で,ヤギに類似したpartly coveredの状態である様子がうかがわれた。
著者
横畑 泰志 杉村 誠 鈴木 義孝 中村 孝雄 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.185-191, 1985-12-15

放香腺として知られるニホンカモシカ眼窩下洞腺の脂腺について,組織学的倹素と脂質分析を行った。脂腺にはI型とII型が区別される。I型脂腺は外皮の脂腺と同様の形態であるが,II型脂腺はヘパトイド様の大型脂腺で雄0歳と雌にのみ出現し,その腺胎内の嚢胞形成は大卵胞や黄体をもった雌及び雌0歳子において著明であった。硅酸カラムクロマトグラフィーによる脂質分画の重量比では,脂腺域では汗腺域より炭化水素及びステロールエステル分画が多かった。特に後者は他動物で既知の性誘引物質が多いとされるステロイド化合物に相当する分画で,ガスクロマトグラム上でもこの分画から脂腺域に特有のピーク群が検出された。このピーク群は性成熟・妊娠などの性的状態に関連して変化することが示された。以上の所見はII型脂腺が一種の性誘引物質を分泌することを示唆するものと考えられる。
著者
小松 武志 坪田 敏男 山本 欣郎 阿閉 泰郎 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.521-529, 1997-07-25
被引用文献数
15 33

ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の精巣内でのステロイド合成酵素の局在に関する季節変化を観察することを目的に, 免疫組織化学的観察を行った. さらに, 血清中テストステロンおよびエストラジオール-17β濃度をRIA法を用いて測定し, 免疫染色の結果と比較検討した. 精細管中における精細胞の形態学的観察から, 各材料採取時期を活性期(5, 6月), 退行期(11月), 休止期(1月), 前回復期(3月)および後回復期(4月)に区分した. 血清中テストステロン濃度は精子形成活性とよく一致した季節変動を示した. Cholesterol side-chain cleavage cytochrome P450, 3β-hydroxysteroid dehydrogenase(3βHSD)および17α-hydroxylase cytochrome P450はライディヒ細胞に通年的に観察され, 3βHSD陽性細胞数のみが血清中テストステロン濃度とよく相関した変化を示した. Aromatase cytochrome P450(P450arom)は通年的にライディヒおよびセルトリ細胞で, 5月および翌年の4および6月に精子細胞で, 1および3月に筋様細胞で観察された. また, P450arom陽性ライディヒ細胞数は5月および翌年の1, 3および6月に増加したが, 血清中エストラジオール-17β濃度は特定の季節変動を示さなかった. これらの結果から, 3βHSDはライディヒ細胞におけるテストステロン産生のキー酵素であること, またライディヒおよび筋様細胞由来のエストロジェンはオートクリンもしくはパラクリン的にネガティブフィードバックによってライディヒ細胞の機能を調節していることが示唆された.
著者
小松 武志 山本 欣郎 坪田 敏男 阿閉 泰郎 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.329-335, 1996-04-25
被引用文献数
7

野生個体1頭と飼育個体3頭から採取した精巣組織材料を用いて, ニホンツキノワグマ(Selenarctos thibetanus japonicus)における精子形成サイクルについて, 光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察を行った. 光顕による観察から, 精子細胞の核およびアクロソームの形態学的変化に基づいて, 精子細胞を11ステップに分類した. さらに, この精子細胞の形態学的変化, 減数分裂像および精子細胞の管腔への遊離時期を指標にして, 精上皮サイクルを8ステージに区分した. 一つの精細管横断面は, 大抵単一のステージによって占められていた. ステップ1-2の精子細胞は, よく発達したゴルジ装置を持ち, ステップ3-5では核膜表面を被うアクロソームに沿って, 三日月状に観察された. ステップ6の精子細胞は先端を基底膜方向に向け, 精子細胞の細胞膜とアクロソーム外膜とが接着した. ステップ9においては, アクロソームがセルトリ細胞の細胞質ヘ突出している像が観察され, ステップ11になると, 精子細胞の細胞質のほとんどがセルトリ細胞に取り込まれ, 精子細胞そのものは精子として管腔へ遊離した.