- 著者
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西村 則昭
- 出版者
- 仁愛大学
- 雑誌
- 仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
- 巻号頁・発行日
- no.3, pp.23-37, 2004
本稿では,思春期女子のアイデンティティの表明としてのあるストリート・ファッション,「ゴシック&ロリータ」と呼称されるジャンルを取り上げ,そこにみられる「魂の論理」を探求した.このジャンルに心酔し,実行する女子は,破壊的な「闇」の近隣に「私」の存在を見出し,そのポジションにあって,自覚的に,ことさらに「無垢」を生きることに,アイデンティティを見出していることがわかった.その背後には,サトゥルヌスープエラ(永遠の少女)のペアの元型が,見通されえた.また,彼女たちは「人形」に憧れるが,それは,「トラウマ」を想像することによって,失われた無垢を演じつつ,日常的な世界構成を停止させ,そこにおのずと性起する「静的な,永遠のリアリティ」(パトリシア・ベリィ)を,我が身の上に表現することで,「私」の存在の実感を希求していることだとわかった.幾多の想像的な世界観(虚構世界を構成する,感性やイマジネーションの特質とか,美意識とか,価値観といったもの)が享受される,この現代にあって,思春期女子の作り上げたアイデンティティのあり方のひとつが,浮き彫りにされた.