- 著者
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小沢 修司
- 出版者
- 京都府立大学
- 雑誌
- 福祉社会研究 (ISSN:13471457)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.2-11, 2000-06
1980年代以降、戦後「福祉国家」体制の動揺のなかでさまざまな再編、見直し論議が盛んに行われてきている。本稿では、ベーシック・インカム構想を取り上げ、その系譜の説明、類似の提案である負の所得税、参加所得、社会配当との比較検討などを行いつつ、アンチ「福祉国家」の租税=社会保障政策論として、自由主義者から社会主義者、エコロジストやフェミニストなど幅広い立場から多くの関心を集めている根拠を探っている。ベーシック・インカム構想が支持されているのは、人々を性別分業にもとづく核家族モデルから解き放ち、資力調査に伴うステイグマや「失業と貧困の罠」から解き放ち、不安定度が強まる労働賃金への依存から解き放ち、労働の人間化や自主的市民活動の広範な発展に寄与することが期待されているからである。ただ、労働と所得の切り離しの是非、公務労働の役割についてなど今後解明されるべき論点も残されている。