著者
川邊 浩史 柿木 昇治
出版者
広島修道大学
雑誌
広島修大論集. 人文編 (ISSN:03875873)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-17, 1998-09-30

本研究では,α波バイオフィードバックと音楽の趣向について3つの実験を行った。第1実験では,α波のピーク周波数を測定した。音楽を聴いている状態でピーク周波数が高くなる傾向が見られたが,個人差が大きいために全体の傾向を把握するのは困難であった。第2実験では5秒間累積積分法を用いたα波バイオフィードバック訓練を行った。ここでは「好きな音楽」が呈示されたときのα波振幅は「嫌いな音楽」,「無音」よりも有意に増加した。しかし,全体的に見るとフィードバック訓練の効果は現れていなかった。これは次々と変わる音響条件が被験者の実験への集中力に何らかの影響を与え,結果としてα波阻止が生じたためと思われる。第3実験では「好きな曲」,「嫌いな曲」を事前に調査することで,被験者の音楽への態度を明確にし,第2実験と同様に5秒間累積積分法を用いてα波バイオフィードバック訓練を行った。条件間では開眼安静期2 (フィードバック訓練後の安静期)でのみしか有意差は認められなかったものの試行間でのフィードバック訓練の効果が認められた。また,一貫して「好きな曲」条件におけるα波振幅が他の条件よりも上回っていた。この結果より,α波の増強・リラクセーションの促進には,音楽の好み,つまり音楽に対する態度が重要な要因になることが明らかになった。

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