著者
武内 進一
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.101-129, 2004-03-19

独立直前の「社会革命」と1990年代の内戦というルワンダにおける2つの紛争を比較し,後者がジェノサイドヘと至ったメカニズムを考察する.2つの紛争はいずれも国家権力闘争に発する内戦であり,それがエスニックな紛争へと転化した点で似ているが,犠牲者の数は圧倒的に異なる.ジェノサイドが可能になったのは,権力喪失の危機感を抱いた急進派が特定のエスニック集団の殺戮を正当化するイデオロギーを流布し,かつ地方行政機構をはじめとする国家機構を動員して民間人の殺戮を実践したからであった.こうした国家機構を通じた動員は,独立後冷戦下に存立した国家のあり方に由来する.国際環境の変化がこうした国家を脆弱化させて紛争を引き起こす一方,従来の体制下で成立した動員システムを急進派が利用し,組織的な暴力が行使されたためにジェノサイドに至ったといえる.

言及状況

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ルワンダにおける二つの紛争 : ジェノサイドはいかに可能となったのか(<特集>冷戦終結と内戦) https://t.co/1yg2v54CCf 危機に直面した政権が権益擁護のために民族差別を利用したのだということが興味深く、日本における人種差別を考える上でも重要な指摘だと思う。

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編集者: Johncapistrano
2012-05-20 22:45:35 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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