著者
村越 行雄
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学紀要 (ISSN:03899543)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.27-68, 1998-03-15

様々な種類の発話の中には, 発話される文の字義どおりの意味によって理解されるものもあれば, その文の字義どおりの意味によっては理解できないものもある。後者には, 幾つもの種類の発話が含まれるが, その中の一つとして, いわゆる間接的言語行為と呼ばれる発話がある。今回検討するのは, その「間接的言語行為」(indirect speech acts) と呼ばれる発話で, 特に間接的依頼を直接の対象にする。具体的な例としては, 間接的依頼として使用される "Can you pass the salt?" (「あなたは, 塩を手渡すことができますか。」) などがある。そのような間接的言語行為の存在そのものを疑い, その存在を否定する意見が出されてきているが, 果たして間接的言語行為は存在しうるのか, その存在の可能性をどこまで主張できるのかという問題に取り組むのが今回の目的であるが, その取り組み方には複数の方法・方向があり, それら全てを扱うことは今回はできないので, 間接的言語行為の代表的な理論の一つである Searle の間接的言語行為理論を中心にして検討を加えていくことにする。Searle の理論を選ぶのは, その基を成す Austin とSearle の言語行為理論自体の可能性を探る上でも, 極めて重要だからである。そして, Searle 自身の間接的言語行為理論のみならず, あくまでも言語行為理論の枠内での間接的言語行為の可能性を探る意味で, その他の間接的言語行為の理論 (説, 主張など) も対象にするが, Searle→Morgan→Bach and Hamish (+Clark)という具合に, Searle の理論を修正・補強・発展させる方向を中心に検討する。そのような意味で, 残念ながら, 言語行為理論の枠外での間接的言語行為の理論 (説, 主張など) は, 必要な限り取り上げ, 必要な限り検討する程度で, 深く入ることはできない。なお, 検討の順序は, 「はじめに」, 「間接的言語行為の問題点」, 「Searle による間接的言語行為の定義」, 「Searle による慣習的に使用される文の例と推論過程」, 「間接的言語行為の分類に関する Searle の問題点」, 「慣習の捉え方」, 「二行為の遂行の可能性」, 「間接的言語行為における文の形態と発語内的力の関係」, 「最後に」となる。

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CiNii 論文 -  間接的言語行為の可能性 https://t.co/2ZwizZ9CHb #CiNii

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