著者
高坂 健次
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-40, 2006-06-30

オリジナリティのある社会学の理論形成のためには閃きやセンスが必要であるが, それ以前に言わば「定石」を踏まえておかなくてはならないことを指摘する.本論は社会学の理論には一般理論, 歴史理論, 規範理論の3つのタイプがあるとの議論をもとに, それらに共通の定石として, 真・善・美・整合性・実践性・明確性を守る必要があることを述べる.その上で, 任意に歴史理論の中から舩橋の主張する「T字型の研究戦略」を対象に「明確性」という定石からみてどのように評価できるかを論じる.次に, 問題の背後には「中範囲理論」の3つの誤謬があると見なして, 中範囲理論の問題点を論じる.3つの誤謬とは, 理論と調査の「統合」の置き違えの誤謬, 抽象化作用の置き違えの誤謬, 研究対象システムの置き違えの誤謬, である.最後に, 先の定石以外に, 異なる理論的枠組みの「統一化」を図ろうとする定石と, 一般理論・歴史理論・規範理論の3つの理論タイプを意識的に相互浸透させるという定石とがあることを示唆する.

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