著者
高橋 一郎
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 4 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.135-149, 2004-09

本論文の目的は, 「少年犯罪が凶悪化している」という通念を批判的に検討することにある。とりわけ,犯罪の「質」の問題に焦点を当てることにより, この通念に対する反論をおこなう。現在, この通念は, 社会一般に広く信じられているものである。しかし, この通念が必ずしも少年犯罪の実態を反映したものでないことは, 多くの研究者が指摘している。例えば, 犯罪統計で見る限り, わが国の少年凶悪犯罪の数は, 1950〜60年代には現在よりもずっと多かったのであり, この時期に比べれば, 現在の数値はおおむね低い水準で推移している。しかし, このような統計データに基づく議論には,一定の限界がある。「少年犯罪が凶葺化している」という主張がなされる場合, 犯罪の量的な増加だけでなく, 犯罪の質的な変化についてもしばしば言及されているからだ。すなわち, 近年の少年凶悪犯罪は, その手口や動機において, かつての少年犯罪にはなかった「凶悪な」特徴が見いだせる,というものである。この主張に対して, 統計データに依拠する従来の犯罪研究は, 十分に反論しえない, と思われる。以上のような状況をふまえ, 本論文では, 1950〜60年代のわが国における代表的な少年犯罪の事例をとりあげ, その内容について検討をおこなう。そして, その検討により, かってはなかったとされる少年犯罪の特徴の多くが, 1950〜60年代においてすでに存在していたことを明らかにする。これにより, 「少年犯罪が凶悪化している」という通念が, 質的変化の観点からも妥当ではないことを示す。

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少し前のものですが、「最近少年犯罪が増えてる!」「数はともかく、凶悪化してる!」とするような安易な主張に対する反論例を。 #親学 http://t.co/1yHLbmOm
少し前のものですが、「最近少年犯罪が増えてる!」「数はともかく、凶悪化してる!」とするような安易な主張に対する反論例を。 #親学 http://t.co/1yHLbmOm

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