- 著者
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吉山 尚裕
板倉 昭二
高橋 正臣
- 出版者
- 大分県立芸術文化短期大学
- 雑誌
- 大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, pp.23-30, 1993-12-31
本研究では、歩行者やドライバー(車)のフライングやかけ込みを社会的影響現象としてとらえ、(1)フライングやかけ込みの生起が、歩行者や車の数(集団密度)によってどのような影響を受けるか、(2)一人の歩行者、一台の車のフライングやかけ込みが、周囲の歩行者や車の追従行動にどのような影響を与えるか、について資料を得ることを目的にフィールド観察を行った。その結果、歩行者に関して、フライングは全観察回数240回のうち89回(37.1%)観察され、それに伴う追従フライングも59回(66.3%)観察された。かけ込みについては、全観察回数240回のうち77回(32.1%)観察され、うち追従かけ込みが29回(37.7%)観察された。このように一人の歩行者のフライングやかけ込みは、周囲の歩行者の行動にも少なからず影響を与えていると言えよう。フライングや追従フライングは、信号待ちの歩行者数による違いが大きく、集団密度が高く、歩行者の個人空間が侵害されやすい状況では生起率が高まることが示唆された。他方、かけ込みについては、歩行者の数による影響は認められなかったが、各地点の特徴を考察すれば、歩行者の急ぎやあせりといった個人的要因や状況的要因をかけ込みの原因として看過できない。また、かけ込みはフライングと比べて若年者に多いのが特徴であり、運動能力への自信や若者特有の衝動性といった面が影響しているものと考えられる。次に、ドライバー(車)の行動に関して、フライングは全観察回数120回のうち26回(21.7%)観察され、うち追従フライングは10回(38.5%)観察された。交通量の多さ(集団密度の高さ)といった点からは結果は明確でなかったが、状況的には本線(大道陸橋北交差点の国道10号線)に侵入する道路(同交差点の国道210号線)においてフライングの生起率が高く、信号待ちの時間の長さからくるイライラや、短い青信号の間に、少しでも早く発進しようとするドライバーの心理を反映しているものと考えられる。かけ込みについては、全観察回数120回のうち86回(71.7%)観察された。黄信号1秒以上のかけ込みに限っても56回(46.7%)となり、フライングに比べて生起率は高い。かけ込みは交通量の多い(集団密度の高い)地点で多く、しかも、かけ込みが観察された86回のうち、かけ込み車の前方に先行車がある場合が67回(77.9%)、後続に追従車がある場合が74回(86.0%)、先行車と追従車の両方が観察された場合が64回(74.4%)であった。このように車のかけ込みの原因は、一旦形成された車と車の密度と流れの中で、停止が困難になることが背景にあると考えられる。今回の観察の中で、とくに車のかけ込みは、重大事故につながりやすい行動であるだけに更なる検討が必要であろう。今後は、車と車の密度や流れに関する計量的指標を開発して、より詳細な分析を試みる必要がある。