著者
吉山 尚裕
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.81-89, 1994-12-31

本研究では、ブティックを対象にして、(1)店舗の魅力を決めている要因は何か、(2)消費者の購買態度によって店舗の魅力の規定因に違いが見られるかを検討した。予備調査の結果から、ブティックの特徴に関する28項目の質問項目を作成。また、魅力度測定のための5項目と、山本(1992)の購買態度項目をブティック向けに一部修正した19項目を加えて調査票を構成した。本調査では、調査対象者に日頃よく行くブティックを1店舗あげてもらい、その店の特徴や魅力度について回答を求めた。購買態度については、各項目が自分にどのくらいあてはまるかを回答させた。調査対象者は、短期大学生女子176人。そのうち173人を分析対象とした。主な結果は、次の通りである。(1)店舗の特徴に関する28項目に因子分析を行った結果、「店員の親しみやすさ」「店員のしつこさ・強引さ」「店内の広さと明るさ」「店の個性づくり」「買う・買わないの自由」の5因子が見い出された。(2)魅力と店舗の特徴因子の関係を検討した結果、ブティックの魅力は、「店員の親しみやすさ」「店員のしつこさ・強引さ」「店の個性づくり」と強く関連していた。また、店員の非言語的行動が、店舗の魅力に影響していることも示唆された。(3)購買態度を含めた分析から、とくに、新商品への関心の高い客や、良い商品を積極的に求める客に対して、「店員のしつこさ・強引さ」は店舗の魅力を低めやすいことが示唆された。本研究から、店舗の魅力を規定する店舗の特徴(属性)のいくつかが明らかにされた。また、客の購買態度によって店舗の魅力の規定因に違いがあることも示唆された。今後、店舗の空間構造や店員の動作が、客の店舗に対する認知にどのような影響を与えているか、などの問題を併せて検討する必要がある。
著者
吉山 尚裕
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-54, 1988-08-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
14

本研究は, 第一に少数者行動の一貫性が, 多数者に生起する少数者への同調行動の内面化に及ぼす効果を時系列的に検討し, 第二に多数者の少数者に対する属性認知 (自信と能力) の成立過程について吟味した。被験者は男子大学生80名。5人集団が構成され10試行群と20試行群の2条件に割りあてられた。実験集団の1人はサクラ (少数者) であった。集団状況において, 被験者はスクリーン上に70cmの長さの線分を3.3m離れた位置から実際に構成するように教示された。そのとき, サクラは一貫して逸脱した長さ (85cm) を呈示した。試行終了後, 被験者は個人状況において線分を構成した。結果は次の通りである。1. 多数者は少数者側への同調行動を生起させたが, 時間経過に伴う内面化の進行は見いだされなかった。2. 多数者は少数者に対して自らよりも“能力”を低く, “自信”を高く認知した。3. 多数者の少数者に対する“自信”認知は, “能力”認知に比べ敏感ではなく, その成立に時間を必要とした。4. また, 多数者は少数者との行動のズレが大きい場合に, 少数者の“自信”を自らよりも高く認知した。少数者の行動一貫性および少数者と多数者の行動のズレは, 多数者の少数者に対する“自信”認知成立の決定因であると結論された。また, 実験結果から今後検討すべきいくつかの間題が討論された。
著者
関 文恭 吉山 尚裕 三隅 二不二 吉田 道雄 三角 恵美子 〓 惠晶
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.25-32, 1997-03

本研究では, 看護専門学校におけるクラス担当教員のリーダーシップPM行動測定尺度を作成し, その妥当性を検討した。調査の回答者となった看護学生数は2277人。リーダーシップ行動項目に関して抽出された4つの因子, 「学習・生活面での厳格性」「社会性育成」「学生に対する配慮」「学習への配慮と工夫」から, P, M各10項目ずつのPMリーダーシップ行動尺度を作成。外的基準変数としての看護学生のモラール(クラスヘの帰属意識, クラスの運営満足, 学校満足, 授業満足, 学習への内発的意欲, 学生生活における規律遵守, 学校生活におけるストレスの因子)との関係を検討した。その結果, PM4類型の効果性順位については, ストレスを除く6つの要因についてPM>M>P>pmの順となり, 本研究で作成した看護教員のリーダーシップ尺度は一定の妥当性を有するものと考察された。
著者
関 文恭 吉田 道雄 篠原 しのぶ 吉山 尚裕 三角 恵美子 三隅 二不二
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-10, 1999-03

本研究は, MOW国際比較研究の一環として, 日本・台湾・中国・オーストラリア・デンマークの大学生の"働くこと"に対する意識・態度を比較したものである。調査対象者は, 各国の大学生1678人であった。主要な結果は, 次の通りであった。(1)日本の学生の「仕事中心性」は, 5カ国の中で低いはうであり, 最も高かったのは中国の学生であった。また, 日本の学生がレジャーを最も重要と考えている点は, 他国の学生と比べて大きな特徴である。(2)働くことに対して, 中国の学生は, 日本の学生とは違ったイメージを抱いている。すなわち中国の学生は, 働くことを社会貢献として捉えているのに対し, 日本の学生は, 自己に課せられた仕事として把握している。(3)中国や台湾の学生は, "働くことは義務であり, 人は働いて社会に貢献すへき"という義務規範を強く支持している。一方, 日本の学生は, 権利規範を支持する度合いが強く, 職場の確保や教育・訓練は, 社会や雇用者側によってなされるべきであると考えている。(4)いずれの国の学生も, 働くことから得られるものとして, 「必要な収入」や「興味・満足感」に高い価値を与えている。中国の学生は, 他の4カ国の学生よりも「社会貢献の手段」として価値づけている。(5)仕事と余暇の関係について, 日本では, "余暇のための仕事"と考える学生の割合が, "仕事のための余暇"と考える学生の割合を上回っている。また, "趣味に合った暮らし"を望む学生の割合か, 他の4カ国よりも高い。(6)職業選択の基準として, 日本・台湾・中国では"適性"を重視する学生か多い。日本の学生は"やり甲斐"を重視する者も多いが, 仕事(職業)に対して, 明確な目標や期待を持っている学生は少ない。本研究の結果から, とくに日本と中国の学生の間で, "働くこと"に対する意識に対照的な違いが見いだされた。今後は, 両国の学生の意識の構造について分析を進めていく必要があろう。
著者
凍田 和美 菊池 達哉 吉山 尚裕 柴田 雄企 高橋 雅也 竹中 真希子 青木 栄二
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.16, pp.1-6, 2011-03-03

本研究は,「地域の安全・安心は地域が守る」 という考えを元に,共助を基盤とした地域防災 SNS を開発し,平常時にはコミュニケーションツールとして,また,災害時には災害・防災情報を効果的に住民に浸透させ,被害を最小化させることを目的としている.なお,本研究は総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度 (SCOPE) で採択された研究開発である.The present study has aimed to develop community disaster prevention SNS. It makes the idea "The region defends the community safety and safety". It is used as a communications tool in normal circumstances. but at the disaster it effectively informs people of the disaster and disaster prevention information, and it minimizes damage. The present study is a research and development adopted by Strategic Information and Communications R&D Promotion Program (SCOPE) of the Ministry of Internal Affairs and Communications.
著者
吉山 尚裕
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.187-194, 1997-12-31
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the relation of love styles in heterosexal intimate relationships and the size of interpersonal networks. One hundred and ninety-three female college students responded to a questionnaire asking about the six love styles based on Lee's theory (1977) and the size of interpersonal networks with male or female friends. Results showed (1) the network size of the students having a lover or a boyfriend was not smaller than that of the students who did not have such an intimate relationship (a mere friend or one-sided love), and (2) the score of Mania, a style of love, was negatively related to the network size with female (own sex) friends. These results suggest that although a heterosexal intimate relationship is not always closed or exclusive, it might become closed or exclusive when the romantic love feeling of Mania is too strong.
著者
吉山 尚裕
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.69-79, 1992-12-31

本研究では、孤独感尺度(LSO)によって類型化されるA〜Dの各タイプの青年が、周囲の他者や社会との関わり方に関して、どのような傾性を持っているのかを検討した。主な結果は次の通りである。(1)相関分析によると、LSOの対他的次元(U)において、人間同士理解・共感しあえると感じている者ほど肯定的な人生態度を持ち、連帯感や独立意識も高い。これに対し、対自的次元(E)において、自己(人間)の個別性を強く意識している者ほど、否定的な人生態度を持ち連帯感が弱く、不安感が高い傾向にあった。(2)孤独感の類型別(A〜D型)に各尺度の平均値を比較すると、A型とD型が生活・人生・社会に対して肯定的な態度を持ち、連帯感や独立意識も高く不安感は低い。これに対し、B型とC型は生活・人生・社会に否定的で不信感を持ち、連帯感や独立意識も低く不安感が高かった。(3)「パターン分類の数量化」によれば、A型を中心にしたグループ(人生・生活・社会に肯定的で連帯感が強い)、B型を中心としたグループ(独立意識が低く不安感が高い)、C型を中心にしたグループ(人生・生活・社会に否定的で連帯感が弱い)、D型を中心としたグループ(独立意識が高く不安感は低い)の4つのグループに分類できた。総じて、A型とD型はB型やC型に比べ、生活・人生・社会に肯定的であり、友人や仲間など身近な人間関係に積極的で、独立意識も高かった。しかしながら、「パターン分類の数量化」の結果が示すように、A型とD型は必ずしも類似したタイプではない。A型は、人生・生活・社会に対して肯定的で連帯感も高く、"他者との情緒的融合状態"にあるタイプと考えられるのに対し、D型は独立意識が強く"一人でいることに充実感"を感じているがゆえに不安感も低いタイプであると言えよう。B型とC型については、B型が独立意識の低さや不安感の高さによって特徴づけられるのに対し、C型は人生・生活・社会への否定的態度と連帯感の低さによって特徴づけられた。LSOの対他的次元(人間同士の理解・共感の可能性)と対自的次元(自己の個別性の自覚)の組合せによって孤独感の特徴はかなり異なっている。この点は、UCLA尺度を用いた研究からは明らかにされていない結果であり、今後、この二つの次元の組合せによって孤独感の様態にどのような違いが生み出されるのか、より詳細に検討していく必要がある。また従来、孤独感は不安感など適応不全とも関連することが明らかになっているが、本研究では、孤独感が独立意識という青年期の発達課題とも関連していることが示唆された。今後は、孤独感が日常生活の中で、対人行動や社会的ネットワークなどとどのように関わっているかも明らかにしていく必要があろう。
著者
吉山 尚裕 板倉 昭二 高橋 正臣
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.23-30, 1993-12-31

本研究では、歩行者やドライバー(車)のフライングやかけ込みを社会的影響現象としてとらえ、(1)フライングやかけ込みの生起が、歩行者や車の数(集団密度)によってどのような影響を受けるか、(2)一人の歩行者、一台の車のフライングやかけ込みが、周囲の歩行者や車の追従行動にどのような影響を与えるか、について資料を得ることを目的にフィールド観察を行った。その結果、歩行者に関して、フライングは全観察回数240回のうち89回(37.1%)観察され、それに伴う追従フライングも59回(66.3%)観察された。かけ込みについては、全観察回数240回のうち77回(32.1%)観察され、うち追従かけ込みが29回(37.7%)観察された。このように一人の歩行者のフライングやかけ込みは、周囲の歩行者の行動にも少なからず影響を与えていると言えよう。フライングや追従フライングは、信号待ちの歩行者数による違いが大きく、集団密度が高く、歩行者の個人空間が侵害されやすい状況では生起率が高まることが示唆された。他方、かけ込みについては、歩行者の数による影響は認められなかったが、各地点の特徴を考察すれば、歩行者の急ぎやあせりといった個人的要因や状況的要因をかけ込みの原因として看過できない。また、かけ込みはフライングと比べて若年者に多いのが特徴であり、運動能力への自信や若者特有の衝動性といった面が影響しているものと考えられる。次に、ドライバー(車)の行動に関して、フライングは全観察回数120回のうち26回(21.7%)観察され、うち追従フライングは10回(38.5%)観察された。交通量の多さ(集団密度の高さ)といった点からは結果は明確でなかったが、状況的には本線(大道陸橋北交差点の国道10号線)に侵入する道路(同交差点の国道210号線)においてフライングの生起率が高く、信号待ちの時間の長さからくるイライラや、短い青信号の間に、少しでも早く発進しようとするドライバーの心理を反映しているものと考えられる。かけ込みについては、全観察回数120回のうち86回(71.7%)観察された。黄信号1秒以上のかけ込みに限っても56回(46.7%)となり、フライングに比べて生起率は高い。かけ込みは交通量の多い(集団密度の高い)地点で多く、しかも、かけ込みが観察された86回のうち、かけ込み車の前方に先行車がある場合が67回(77.9%)、後続に追従車がある場合が74回(86.0%)、先行車と追従車の両方が観察された場合が64回(74.4%)であった。このように車のかけ込みの原因は、一旦形成された車と車の密度と流れの中で、停止が困難になることが背景にあると考えられる。今回の観察の中で、とくに車のかけ込みは、重大事故につながりやすい行動であるだけに更なる検討が必要であろう。今後は、車と車の密度や流れに関する計量的指標を開発して、より詳細な分析を試みる必要がある。