- 著者
-
戸梶 亜紀彦
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.27-37, 2004-03-19
- 被引用文献数
-
3
人間は, さまざまな経験をとおして成長・発達していく。そして, 個々の体験から, 何らかの影響を受け続ける。特に, 強烈な情動を伴った出来事の影響は強いと考えられる。そこで本研究は, 「自分の何かを変えた感動的な出来事」について調査を行い, 感動の効果に関するメカニズムについて詳細な検討を行った。その結果, 感動には大きく分けて, 動機づけに関連した効果, 認知的枠組みの更新に関連した効果, 他者志向・対人受容に関連した効果という3つの効果のあることが示された。また, 感動体験は, 単に個人の何かを変化させる契機となるだけではなく, 出来事に対する総合的な評価を背景とした外的事実の成立の瞬間と, 心身の感覚および認知的作用の相乗効果とが重奏的に作用して, 個人の何かを変化させた出来事をより印象的な事象として記憶の貯蔵庫に精緻化して各効果を増強し, 持続させる役割を果たし, さらに, 個々人の問題意識に関連するような潜在的および顕在的目標行動を始発させる契機となっているという可能性が示唆された。これらの結果に基づいて, 感動的体験の応用可能性について論じられる。