- 著者
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前迫 ゆり
- 出版者
- 奈良佐保短期大学
- 雑誌
- 研究紀要 (ISSN:13485911)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.37-43, 2004-03-31
- 被引用文献数
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2
1.春日山原始林の保全に寄与する生態学的基礎資料を得ることを目的とし,環境庁が1986年に設置した特定植物群落永久コドラート(20m×20m)で2003年に現地調査を実施し,既存資料とあわせて17年間の群落動態を検討した.2.胸高直径10cm以上の木本についての毎木調査から,コジイの相対優占度は1986年,1997年および2003年に,それぞれ91.7%,93.9%,91.4%を示し,大きな変化はみられなかった.しかしサイズ構造においてはコジイの小径木が少なく,逆にクロバイが増加することによる構造変化がみられた.3.植物社会学的調査により,全体の出現種は2種減少にとどまったが,低木層では種の減少(6種減少)および草本層の種の交代が著しかった.4.1986年から2003年までの17年間に台風によるギャップ形成とシカの採食による林床植生の貧化および種の交代が確認され,これら偶発的要因が森林動態に大きく関与していることが示唆された.