著者
上宮 健吉
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
no.39, pp.337-345, 2005-03

東京都の赤坂御用地で2002-2003年に国立科学博物館の調査で採集されたキモグリバエ科標本を分類学的に調査した.関東地方はキモグリバエ科の昆虫相が九州や南西諸島と比べて十分になされてこなかった.Kanmiya(1971,1977,1978,1983,1989)および林・篠永(2000)によって記録された東京都(島嶼を除Oの牛モグリバエ科は19種に過ぎず,関東地方で比較的良く調査されている埼玉県のキモグリバエ科(玉木,2000)の32種よりも少ない.今回,赤坂御用地から16種のキモグリバエ科が記録され,その中の8種が東京都から初めて記録された.その結果,東京都から記録された種は合計27種に達した.今回の調査で得られた赤坂御用地のキモグリバエ科の特徴は月日熱帯区や東洋区に繁栄して,九州以南に多くの種が分布する属の存在である.その中で,Rhodesiella属では,R. yamagishii. R. nitidifrons, R. simulata,および日本末記録のR. sp. 1の4種が計上された.また, Disciphus, Caviceps, Meijirella, Pachylophusの各属に含まれる種も熱帯系で,記録された種は九州,南西諸島から東洋区に広く分布する種である.さらに, Elachiptera corniferとSteleocellus corniferも東洋区に広く分布している種である.一方,旧北区系の種はGampsocera numerateとDicraeus rossicusの2種に過ぎない. D.rossicusはイネ科植物の若い種子に侵入する種である.G.numerataはヨーロッパと共通種で,広葉樹林の林床に棲息し,幼虫の餌は植物由来の腐食有機質で,日本では非常に稀にしか採集されていないが,赤坂御用地では8個体が得られた.Gampsocera magnisinuosaは日本固育種で,これまで九州から南西諸島にかけてわずかながら記録されていたが,今回本州から初めて記録された.赤坂御用地で記録された16種(皇居から記録された4種も含まれる)のうち,13種がOscinellinae亜科,残りの3種がChloropinae亜科に属する.これは,Kanmiya(1983)が日本産キモグリバエ科の総説で記録した145種の構成(Oscinellinae亜科26属80種,Chloropinae亜科26属65 種)とは異なる.この理由として,皇居や赤坂御用地のキモグリバエ相は,棲息環境に広葉樹が多く,イネ科草原が少ないので,幼虫が腐食性の熱帯性の属が含まれるOscinellinae亜科が優占し,食皆既でイネ科植物の茎や種子に侵入する旧北区系の属のChloropinae亜科が少ないからということがあげられる.棲息場所の環境がキモグリバエ科の種属の構成に関係していることが考えられる.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 3 favorites)

Gampsocera magnisinuosa Kanmiya, 1983 ユミモンヒゲブトキモグリバエ氏である可能性が高い。 https://t.co/m48RExiZCz

収集済み URL リスト