- 著者
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小池 清治
- 出版者
- 宇都宮大学
- 雑誌
- 宇都宮大学国際学部研究論集 (ISSN:13420364)
- 巻号頁・発行日
- no.19, pp.147-153, 2005-03
第1期ナショナリズム 8世紀初頭、国体改革と『古事記』の漢語和語混交体の創造。第2期ナショナリズム 10世紀初頭、国風文化勃興と『古今集』「仮名序」等、和文の創造。第3期ナショナリズム 12世紀末期、律令制度から封建制度へ。漢字カタカナ交り文の発達。第4期ナショナリズム 13世紀後半「元寇」と漢字ひらがな交じ文の発達。第5期ナショナリズム 16世紀末から17世紀初頭、鎖国。写本の筆記体から版本の印刷体へ。第6期ナショナリズム 19世紀後半、「明治維新」と言文一致体の創造。第7期ナショナリズム 1945年終戦、「新漢字・新仮名遣い」昭和言文一致体の開始。このように、日本語の歴史において、ナショナリズムと文体とは不思議な相関性を示す。本稿では、第1期ナショナリズムと文体の関係について述べる。『古事記(こじき)』は国体を誇示するものとして企図された、中国人に示すための歴史書であった。したがって、本文は漢文(中国語)で書かれればよかった。しかるに太安万侶(おおのやすまろ)は勘違いをし、日本人を想定読者としてしまい、漢文(中国語)の中に日本語をはめ込む漢語和語混交体、結果的に漢字だけを用いた「漢字仮名交じり文」を創造してしまった。