- 著者
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吉村 耕治
- 出版者
- 関西外国語大学
- 雑誌
- 研究論集 (ISSN:03881067)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, pp.75-92, 2006-09
1953年以降、日本では台風を発生順に通し番号を付けて呼んでいるが、アメリカ合衆国ではhurricaneを個人名で呼ぶ慣行が定着している。米国では1953年にハリケーンの名称に女性の個人名の採用が正式に決まったが、1979年には女性名だけでなく、男性名の採用も決まり、1979年以降はアルファベット順に男性と女性の個人名が交互に使用されている。この現象は米国の人権意識の高さを表すだけではない。兄弟姉妹、両親、上司にも個人名を用いる習慣が反映しており、行為者を重視する表現を好むという英語表現の伝統的な傾向とも深く結びついている。台風の呼び名には、「お兄[姉]さん」「お父[母]さん」「部[課]長」という立場や役職上の名前を敬称として用いる日本語の習慣が関連している。英語と日本語によって熱帯性低気圧の命名法が異なるという現象の根源に、「人を中心に考える」英語文化と「人と人の関係」、つまり、「状況を中心に考える」日本語文化という相違が内在している。