著者
山田 美香
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-92, 2006-01-10

中国では犯罪予防教育が盛んである。2005年に北京で調査した際、法曹界が積極的に学校で法教育を実践していた。また中国の社会科・道徳の授業の指導要領には子どもが犯罪に遭わないためにどうしたらいいのかを第一義に考える項目があり、教科書もそのような構成となっている。その一方で、日本は少年犯罪発生を他人事のように考え、決して学校レベルで解決するという姿は見られない。少年犯罪の対処の方法は中国と日本では大きく異なっている。第一に、中国では犯罪予防の認識が高い。これは中国の社会が多様であり、貧困から犯罪に走ること、自己の権益が守れないこと、日本と同じように都市文化の影響で簡単に非行に走るケースが見られるなど、その対応に追われているためである。第二に、従来から、共産党組織や党の活動が犯罪防止に役立ったが、最近の中国では党主導の活動より学校教育で犯罪予防をする方向にある。第三に、日本では、個人のプライバシーや行政の家庭への介入への蓄積がないことが、問題を放置させる原因となっている。抜本的な改革が必要だと考える。第四に、中国ではモデル地区を選定し、その実施の状況を広く全国に進めていく政策方針を取っている。犯罪予防教育に対する各界の連携も北京市海淀区などは好例だが、各々の機関が協力しあう雰囲気を作っている。日本も各市町村にモデル地区を作るべきではないか。

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