著者
橘川 武郎
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.3-12, 2007

これまで日本の不動産業に関する史的研究が十分な成果をあげてこなかったのは, (1)不動産は非常に差別化された財であるため, 不動産価格の動向を把握することが困難である, (2)不動産業の分析に当たっては, 多様な要因を考慮に入れなければならない, (3)不動産業の担い手の実態を総合的に把握することは難しい, などの理由による.本稿では, これらの難題に挑戦した最新の研究成果である『日本不動産業史 : 産業形成からポストバブル期まで』(仮題, 編者 : 粕谷誠・橘川武郎, 名古屋大学出版会から近刊予定)の内容を紹介し, 日本不動産業がこれまで歩んできた軌跡とこれから進むべき方向性を概観する.今日, 日本の不動産業は, 「資産効果経営」(地価上昇に依存した経営)から脱却し, 実需に立脚した本来の経営に回帰するという, 歴史的な転換点に立たされている.ここで言う本来の機能とは, 不動産に関する開発機能と取引費用削減機能という, 明治期以来不動産業が発揮してきた, 二つの固有機能のことである.このような本来の姿に立ち返ることなくして, 日本不動産業の未来は, 切りひらけないであろう.

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[RE][book] 橘川武郎(2007)「日本不動産業の史的研究とその成果ー『日本不動産業史:産業形成からポストバブル期まで』が明らかにしたもの」 (特集 日本不動産業の展開過程) https://t.co/UynBnlErjx 読。表1「日本不動産業史研究の代表的な先行業績」が有益。 https://t.co/flyo0EcP23

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