- 著者
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小野 泱
岩佐 光啓
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.4, pp.751-768, 1976-06-25
1.1973年6月から9月にわたって各月毎に1回,4回にわたり日高幌尻岳七ツ沼カールボーデン(1,600m)とその登山口(900〜1,000m)において吸血昆虫の種類と月別発生状況を調べ,4属9種のブユ類,4属11種のカ類,1属5種のヌカカ類,3属4種のアブ類を確認した。特に七ツ沼におけるブユ類の日周活動についても調査した。2.一般に日高山系は特有の地形,気象条件,植物相などから大雪山系に比較して吸血昆虫の発生量は少ない。これは特に七ツ沼カールボーデンは乾燥した砂礫質で,同一高度の大雪山の高原状湿原と環境が著しく異なっている点と関係深いようである。3.ブユ類ではTwinnia sp.,Cnephia (Stegopterna)sp.の2属が今回の調査で北海道にも生息していることが確認された。種名は本州産,大陸産の類似種と幼虫,雄成虫の形態が比較されていないので後日検討すべきである。4.七ツ沼のブユ類ではTwinnia sp.が優占種となり,6月から9月まで見られ7月が最盛期となっていた。これに少数のアシマダラブユが混じ,きわめて少数のC. (Stegopterna)sp.,ウチダツノマユブユ,キアシオオブユ,スズキアシマダラブユおよびアカクラアシマダラブユが採集された。5.Twinnia sp.の日周活動は7〜16℃の温度範囲で,夕方にピークが見られる1山型消長が普通であった。しかし早朝から無風快晴15〜16℃となった日には朝夕にピークが見られる2山型を示した。6.ブユ類の刺咬活動は18〜28℃の温度範囲で観察されたが,優占種のTwinnia sp.は人体に吸血性はないと見なされ,アシマダラブユも亜高山帯のように明瞭な吸血性を示さなかった。7.カ類ではチシマヤブカが最も多かったが,大雪山系に見られるような大発生は認められなかった。七ツ沼で採集されたオオモリハマダラカは北海道未記種である。8.ヌカカ類ではヌカカが優占種となっていたが,本種も大雪山系のような大発生は観察できなかった。9.アブ類は4種発見されたが,それらの個体数は少なかった。