- 著者
-
水品 江里子
麻柄 啓一
- 出版者
- 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.4, pp.573-583, 2007-12-30
日本文の「〜は」は主語として使われるだけではなく,提題(〜について言えば)としても用いられる。従って日本文の「〜は」は英文の主語と常に対応するわけではない。また,日本語の文では主語はしばしば省略される。両言語にはこのような違いがあるので,日本語の「〜は」をそのまま英文の主語として用いる誤りが生じる可能性が考えられる。研究1では,57名の中学生と114名の高校生に,例えば「昨日はバイトだった」の英作文としてYesterday was a part-time job.を,「一月は私の誕生日です」の英作文としてJanuary is my birthday.を,「シャツはすべてクリーニング屋に出します」の英作文としてAll my shirts bring to the laundry.を提示して正誤判断を求めた。その結果40%〜80%の者がこのような英文を「正しい」と判断した。これは英文の主語を把握する際に日本語の知識が干渉を及ぼしていることを示している。研究2では,日本語の「〜は」と英文の主語の違いを説明した解説文を作成し,それを用いて高校生89名に授業を行った。授業後には上記のような誤答はなくなった。