- 著者
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丹下 和彦
- 出版者
- 関西外国語大学
- 雑誌
- 研究論集 (ISSN:03881067)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, pp.135-150, 2008-03
ギリシア悲劇の競演の最終審査は、予選通過者3人がそれぞれ一日に4篇の劇を上演して競われるが、その4番目に上演される劇はサテュロス劇であるのが通例である。サテュロス劇とは、山野の精サテュロスが合唱隊に扮して幾分品の悪い下ネタで笑いを取る短い笑劇である。ここに取り上げる『アルケスティス』は、サテュロスは登場しないものの4番目に上演された劇であるゆえに、古来サテュロス劇の代替作品と見なされてきた。 本稿は、そのサテュロス劇的要素を劇中に探りながら、同時に作者エウリピデスが唯一残存するサテュロス劇『キュクロプス』で見せた笑劇の背後の真摯な人間観、また鋭い時代意識が本編にも見られるかどうか、主要人物アルケスティス、アドメトスの死生観をもとに考察する。