- 著者
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田中 彰吾
- 出版者
- 東海大学
- 雑誌
- 総合教育センター紀要 (ISSN:13473727)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, pp.1-14, 2008
バウムテストに代表される描画法心理テストでは,解釈のさいに空間象徴と呼ばれる仮説を適用する。この仮説は経験的にはきわめて有効であることが知られているが,その根拠は必ずしも明確にされていない。本稿は,現象学的方法に依拠しつつ,空間象徴を理論的に基礎づけようとするものである。現象学では,われわれが経験しているありのままの空間を「生きられた空間」と呼ぶ。生きられた空間は,身体の姿勢と構造に対応して,上下・前後・左右という三つの方向に分節されている。しかも,われわれは身体を通じて,上と下,前と後,右と左を,それぞれ対照的な意味合いとともに経験している。生きられた空間の意味と空間象徴モデルを照らし合わせると,空間象徴には一定の根拠があることが明らかとなる。とくに,モデルに示された上下の意味については,ほぼ全面的に信頼できる。左右の意味については,従来より限定的に解釈すべきだが,やはり一定の妥当性がある。