- 著者
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林 林
- 出版者
- 嘉悦大学
- 雑誌
- 嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.2, pp.75-87, 2007-10-31
初級日本語教育における文型指導は、文の構造理解と生成能力の獲得のため、語彙教育と並んで中心的な位置を占めるものである。従来、「〜に(は)〜がある/いる」と「〜は〜にある/いる」という文型が、いわゆる存在文型のペアとして定着している。しかし、それを導入する際、ほとんどの教科書では単に動詞の「存在」と「所在」という意味合いに着眼点を置き、そして文型間に無関係の語彙を代入して練習するに止まるといえよう。文型の意味づけと、「は」、「が」または「に」を含む名詞句とのかかわり、また文型の提出順序と名詞句との関連性によるアプローチが不充分であり、単なる動詞からの捉えでは、初級学習者の習得には明らかに十分ではないと考えられる。本稿では、主として文の発話前提と名詞句の役割との関係について、変形文法の記述から議論することによって、この二つの文型の意味づけにおける名詞句の関与を考察する。これを踏まえて、文型導入際の文型の提出順序を提案し、教室現場の文型指導に値する手口を探ることを試みたい。