- 著者
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福本 安甫
田中 睦英
押川 武志
- 出版者
- 川崎医療福祉大学
- 雑誌
- 川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.2, pp.433-438, 2009
高齢者139名を対象に,高齢者意識に関する15項目の質問とQOL評価を行い,高齢者の主観的高齢感とQOLの関係を検討した.日常生活が自立した在宅高齢者の場合は,高齢者であるという意識は少ない傾向にある.高齢感は年齢や性別より「感じ方」の影響が大きく,最大の要因は病気にかかる頻度とそれに対する心配にあるといえ,罹患の頻度が多くなるほど,高齢感が増大する可能性を示唆した.高齢者意識が高いほどQOLが低下する傾向にあり,高齢者自身が高齢者という用語に対して「マイナスイメージ」を持っていることが示唆された.また,高齢感は過去の自分や他者との比較の中から感じ取られる可能性が示唆された.高齢者意識とQOLとの関連において,高齢感が弱い場合は「生活のハリ」「心理的安定感」「積極的外出」などが関連し,高齢感が強い場合は「幸福感」「ゆとり感」「趣味などの楽しみ機会」などに関連することがわかった.これらの関係は,自己受容或いは自己効力感の作用と考えられたが,今後の検討課題となった.これらの結果から,高齢感の変化とQOLの視点をもった予防医学の展開が重要と考えられた.