- 著者
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船津 誠也
今泉 敏
藤本 雅子
橋詰 顕
栗栖 薫
- 出版者
- 県立広島大学
- 雑誌
- 県立広島大学人間文化学部紀要 (ISSN:13467816)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.63-71, 2008
- 被引用文献数
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本研究では日本語母語話者の子音クラスタ中への母音挿入について生成・知覚両面からの検討を行なった。アルファベット表記された英単語および無意味語のリストを読み上げる発話実験において日本語母語話者は、/t/、/d/の後には母音/o/を挿入し、それ以外の子音の後では/u/を挿入して発音する傾向があることを確認した。発話実験と同一の検査語を用いた復唱実験から、英語母語話者の発話を復唱した場合には、ほとんど母音挿入が生じず、生じた場合においても挿入母音長は発話実験時に比べて短いことが明らかになった。脳磁図を用いた脳機能計測において、子音クラスタ中の母音の有無を検出できるかどうか計測したところ、母音の有無によるミスマッチ反応が生じており母音の有無が検出されていた。以上の結果から、日本語母語話者における子音クラスタ中への母音挿入は、Dupouxらが言うような「幻の母音」を知覚して生じているのではなく、調音上の問題である可能性が示唆された。