- 著者
-
和泉 絵美
内元 清貴
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.297, pp.27-32, 2008-11-08
- 参考文献数
- 10
本研究では、日本人英語発話データ(The NICT Japanese Learner English Corpus)に含まれる誤りを主な手がかりとして、日本人英語における実践的コミュニケーション能力(=通じやすい発話をできる能力)を記述することを目的とする.著者の先行研究においては、特に語彙、語用、談話の誤りが発話の通じやすさを最も大きく減じる原因となることが示唆された。そのうち語彙誤りに関して詳細な分析を行ったこところ、誤り語と訂正語の意味的関連性が高いほど発話は通じやすくなることを示す結果を得た。また、英語運用能力レベルの高い学習者ほど密度の高い語彙空間を持っているため、たとえそれが誤りであっても正解語と高い意味的関連性を持つ誤り語を使用していることが分かった。これらはすべて単語間のparadigmaticな関係を対象としているが、適切な言語運用にはsyntagmatic,analyticな関係についても知る必要がある。本研究では、学習者の語彙運用においてこれら3つのような深い言語知識がどのように作用しているのか分析する。具体的には、どのような語彙知識が不足、または正しく運用(認知)されなかったために誤りが生じたのか、一つ一つの誤りの原因を推測し、その結果と発話の通じやすさのレベルおよび発話者の英語運用能力レベルとの相関を調査する。