- 著者
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岡 孝夫
井野 靖子
高橋 幸水
野村 こう
花田 博文
天野 卓
寒川 清
秋篠宮 文仁
- 出版者
- 東京農業大学
- 雑誌
- 東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.363-367, 2009-03-16
龍神地鶏は和歌山県の旧龍神村(現在の田辺市)で少数が維持されている集団であり,同地で古くから飼養されているものである。1994年には村内で30数羽が飼養されていたが,近年では個体数が減少し,遺伝的多様性の減少が懸念されている。そこで本研究では1994年および2007年に採血された龍神地鶏(1994年12羽,2007年2集団各18羽,7羽)について,ISAG/FAO推奨の30座位のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的多様性の経時的な比較と他の日本鶏品種との遺伝的類縁関係を明らかにすることを目的とした。龍神地鶏3集団において30座位中12座位で多型が認められず,5座位で対立遺伝子の消失が認められた。さらに6座位においては遺伝子頻度0.5以上の主要な対立遺伝子が変化していた。その他の座位の対立遺伝子数は2から3の範囲であった。龍神地鶏各集団の平均対立遺伝子数およびヘテロ接合体率は既報の他の日本鶏品種よりも低い値を示した。次に,日本鶏品種内における龍神地鶏の遺伝的な位置を明確にするため,他品種の解析データを加えてD^A遺伝距離にもとづく近隣結合系統樹を作成した。その結果,龍神地鶏は比較に用いたどの品種ともクラスターを形成せず,高いブートストラップ値で他の品種から分かれる結果となった。以上の結果より,龍神地鶏は地域に固有の品種である一方,小集団で長く維持されてきたため近交がすすみ,遺伝的多様性が低くなった集団であると考えられた。今後この品種を維持するためには,現在残されている2つの集団のみならず,県の試験場等を含めて十分な集団サイズを確保し,集団間の系統的維持が必要であると考えられた。