著者
岡 孝夫 天野 卓 林 良博 秋篠宮 文仁
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.77-87, 2004-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
40
被引用文献数
1 4

セキショクヤケイ(G.gallus)の亜種認識に関する統一の見解は現在も得られていない。一般にセキショクヤケイの亜種は生息地,羽装,耳朶色などによって分類される。また,その広大な生息地にはさまざまな気候や植生が存在する。このような環境条件は草むらに身を隠す習性をもつセキショクヤケイの羽装に影響を与えている可能性が考えられる。さらに羽装は繁殖季節によって影響を受けやすい形質であり,また観察条件や観察者の主観によっても異なる。耳朶色に関しても,赤色と白色の2形質が亜種分類の基準にされてきたが,白耳朶は単一遺伝子により発現する形質ではないことが報告されている。従来の分類ではG.g.murghi,G.g.jabouilleiおよびG.g.bankivaの3亜種は大きさや羽装によって明確に分類されている。G.g.gallusとG.g.spadiceusの分類に関しては,G.g.gallusに完全白耳朶と不完全白耳朶の2型の存在が認められているが,現在ではそれらを一括してG.g.gallusとし,赤耳朶のG.g.spadiceusとは耳朶色のみによって区別している。タイとマレーシアのG.g.gallusにおいて,タイのG.g.gallusは完全白耳朶,マレーシアのG.g.gallusは不完全白耳朶を呈し,両者の生息地はG.g.spadiceusの生息地によって分断されている。もし白耳朶形質の完全,不完全を亜種分類の根拠とするならば,G.g.gallusはさらに2つのグループに分類することもできる。さらにmtDNA情報を用いたいくつかの研究においても,この分類を示唆する結果が報告されている。したがってセキショクヤケイの亜種分類は,これまでの形態学的手法を新たな視点で見直すとともに,最新の空間分析や分子遺伝学などの手法などを用いることが望ましいと考えられる。
著者
片岡 孝夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.87-100, 2009-03-12

サーチ論的な貨幣的交換のモデルを用いて貨幣供給量と定常均衡の関係,ならびに定常均衡の動学的分析を行う。 貨幣供給量が最適な定常均衡に対応する水準にあるとき,連続的な定常均衡が存在し,それらの中のどれが実現するかは初期条件に依存する。貨幣供給量が上の水準を上回るときには,比較的好ましい鞍点安定的定な常均衡が存在するが,その水準に僅かでも及ばない場合には,貨幣は機能不全を起こし,経済は常に自給自足経済と同程度の劣悪な状態に収束してしまう。このような状況下で,政府が増発した貨幣で実物財を購入するならば,その財が廃棄されたとしても,パレートの意味で改善がなされる場合があることが示される。
著者
片岡 孝夫
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

細胞傷害性T細胞(CTL)はパーフォリン依存性経路およびFasリガンド依存性経路によってウイルス感染細胞や腫瘍細胞を殺傷する。エポキシシクロヘキセノン誘導体ECHやRKTS-33は、カスパーゼ8の活性化を阻害し、Fas依存性のアポトーシスを特異的に阻害する。ECHやRKTS-33は、CTLによるFasリガンドの発現誘導に対する抑制作用が弱かったが、パーフォリンを発現していないCD4^+CTLやコンカナマイシンAで処理したCD8^+CTLによるFasリガンド依存性の細胞傷害経路を強く抑制した。しかしながら、ECHやRKTS-33はCD8^+CTLによるパーフォリン依存性の細胞傷害経路を抑制しなかった。これらの結果から、ECHやRKTS-33は、CTLの細胞傷害機構において、Fasリガンド依存性経路の特異的な阻害剤であることが明らかとなった。タンパク質合成阻害剤アセトキシシクロヘキシミド(E-73)は、IL-1による転写因子NF-κBの活性化を抑制せず、TNF-αによるNF-κBの活性化を選択的に抑制する。ヒト肺がん腫A549細胞をE-73で処理すると、TNFレセプター1のA549細胞における発現量が減少し、低分子量化したTNFレセプター1が培地中に増加することが観察された。メタロプロテアーゼ阻害剤GM6001やTACE(TNF-α converting enzyme)阻害剤TAPI-2で前処理すると、E-73によるTNFレセプター1の培地中への蓄積が抑制された。以上の結果から、E-73はTACEによるTNFレセプター1のシエディングを誘導することによって細胞表面のTNFレセプター1の発現量を減少させ、TNF-αに対するA549細胞の反応性を低下させることが明らかとなった。
著者
岡 孝夫 井野 靖子 高橋 幸水 野村 こう 花田 博文 天野 卓 寒川 清 秋篠宮 文仁
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.363-367, 2009-03-16

龍神地鶏は和歌山県の旧龍神村(現在の田辺市)で少数が維持されている集団であり,同地で古くから飼養されているものである。1994年には村内で30数羽が飼養されていたが,近年では個体数が減少し,遺伝的多様性の減少が懸念されている。そこで本研究では1994年および2007年に採血された龍神地鶏(1994年12羽,2007年2集団各18羽,7羽)について,ISAG/FAO推奨の30座位のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的多様性の経時的な比較と他の日本鶏品種との遺伝的類縁関係を明らかにすることを目的とした。龍神地鶏3集団において30座位中12座位で多型が認められず,5座位で対立遺伝子の消失が認められた。さらに6座位においては遺伝子頻度0.5以上の主要な対立遺伝子が変化していた。その他の座位の対立遺伝子数は2から3の範囲であった。龍神地鶏各集団の平均対立遺伝子数およびヘテロ接合体率は既報の他の日本鶏品種よりも低い値を示した。次に,日本鶏品種内における龍神地鶏の遺伝的な位置を明確にするため,他品種の解析データを加えてD^A遺伝距離にもとづく近隣結合系統樹を作成した。その結果,龍神地鶏は比較に用いたどの品種ともクラスターを形成せず,高いブートストラップ値で他の品種から分かれる結果となった。以上の結果より,龍神地鶏は地域に固有の品種である一方,小集団で長く維持されてきたため近交がすすみ,遺伝的多様性が低くなった集団であると考えられた。今後この品種を維持するためには,現在残されている2つの集団のみならず,県の試験場等を含めて十分な集団サイズを確保し,集団間の系統的維持が必要であると考えられた。