- 著者
-
宮村 正光
諸井 孝文
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.115-122, 1995-11
- 被引用文献数
-
1
1995年1月17日の早朝に発生した阪神大震災では、大量の家屋の倒壊とともに、重要な防災拠点のひとつである病院や診療所の多くが、施設、設備、機器の何らかに被害を受けた。被害が比較的軽微であった病院においても、救急医療活動に相当の混乱が生じ、今後の地域防災を考える上での重要な教訓を残したと言える。医療機関自体が被災しながら災害医療にどう対応したか、多数の負傷者が殺到した治療現場の具体的状況を明らかにするため聞き取り調査を実施した、調査の主な内容は次のとおり、ハード面の被害ばかりでなくソフト面での問題まで、できるだけ幅広い項目とした。(1)建物・施設の構造的被害、二次部材・設備機器の被害 (2)ライフラインの停止と復旧、停止時の対策 (3)医療原器・医薬品の損傷状況 (4)救急治療現場の実状と医療スタッフの対応、入院患者の被災状況 (5)他病院・他機関との連係、患者の搬送、情報通信 調査を対象とした病院・診療所には、全半壊につながる大被害を受けたところはない。しかし、医療機器や医薬品の破損、医療スタッフの被災、ライフラインの停止が救急医療に重大な影響を与えた。また交通渋滞や情報の途絶が、救急救命活動の深刻な障害となった。一方で、病院間の相互支援が機能維持に大きな役割を果たしたこともわかった。本報告は、これらの調査結果をまとめるとともに、医療機関が災害時の防災拠点施設として十分な機能を発揮するための今後の課題や考慮すべき対策について示したものである。