- 著者
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佐藤 恭道
大熊 毅
別部 智司
戸出 一郎
雨宮 義弘
- 出版者
- 日本歯科医史学会
- 雑誌
- 日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.2, pp.61-64, 1998-04-20
7世紀中ごろ唐の孫思〓によって編纂された『備急千金要方』(以下「千金方」)における口臭治療について検索した.処方は33方と比較的多く記載されている.この中には口臭を消すだけでなく,芳香にする処方や,衣服の臭いや体臭を消す処方まで記載されている。構成生薬は香料や芳香性の強い健胃薬など多岐にわたっている.これらは概ね陶弘景の「集注本草」に基づいているが,後代の「新修本草」や「開宝本草」「証類本草」から記載されているものも認められた.口臭除去は古代から相変わらず香料に依存しているところが大きい.社会環境の変化とは無関係に古代から口臭が人々の大きな悩みであったにもかかわらず根本的な治療法がないまま,それぞれの時代で主に香料のマスキング効果に頼って来たように感じられた.しかし「千金方」における口臭症治療は,多くの処方を記載し,後代の「外台秘要方」「太平聖恵方」などにも影響を与えたものと考えられた.