- 著者
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佐藤 恭道
大熊 毅
別部 智司
戸出 一郎
雨宮 義弘
- 出版者
- 日本歯科医史学会
- 雑誌
- 日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.87-92, 1999-09-30
ボーイスカウト運動の創設者, R.S.S. Baden-Powell (以下,B-P)が著した"Scouting for Boys"の初版(1908年・改訂成本版)の「歯」に係わる項目について考察した.内容は,ユーモアを交えて書かれた,歯が悪いために採用されなかった志願兵の話,具体的な歯磨きの習慣について,詳細な図で説明された房楊枝に似た小枝を利用した歯ブラシ,ボーア戦争当時,歯が悪いために本国に送還された兵士の話,また歯ブラシに対するカウボーイやアフリカに住む白人の話などが認められた.これらの記述はB-Pのインド,アフリカにおける軍隊生活における経験のみならず,19世紀後半から20世紀にかけて,歯科医学の進歩に裏打ちされたものであると考えられた.また20世紀初頭における少年向け書籍の中で歯口清掃の啓蒙と野外で応用できる歯ブラシの作成法は特筆すべきものであり,当時の口腔衛生に関する世相を知る上で一つの資料になるものと考えられた.