著者
小山 達雄 井上 大成
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.143-153, 2004-12-25
参考文献数
30
被引用文献数
6

従来,近畿地方以西に分布していたムラサキツバメは,近年,関東地方のほぼ全域で発生している.現段階での本種の定着北限に近いと考えられる関東地方北部において,2002〜2003年に野外における発生経過と幼生期の捕食寄生者および随伴するアリ類について調査した.1.野外における成虫・卵・幼虫の個体数調査の結果から,茨城県つくば市では,本種は部分4化であることが示唆された.第二〜第四世代の卵数のピークは,それぞれ6月下旬〜7月上旬,8月下旬,9月中旬であった.また第一世代に相当すると思われる卵が4月上旬に発見された.2.これまで,本種は4齢幼虫が終齢であるとされていたが,飼育観察と野外で採集された幼虫の頭幅の測定結果から,蛹化するまでに5齢を経過することが明らかとなった.3.幼虫あるいは蛹化後の蛹には,7種のアリ類が随伴していた.4,本種の卵期における捕食寄生者はこれまでに報告されていなかったが,本研究によって少ないながら卵が寄生されていることが明らかになった.また,幼虫期の寄生は確認できず,蛹期の寄生も数例のみに限られた.

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