著者
藤田 敏彦 並河 洋
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.31-37, 2006
被引用文献数
1

トゲクモヒトデ科のOphiocnemis marmorataは,通常砂泥底に棲息しているが,インド・太平洋域で鉢水母のビゼンクラゲ類に付着している姿が稀ながら目撃されていた.最近,フィリピンのパラワン島で,多くのビゼンクラゲRhopilema esculentumの傘内や口腕に本種が1〜数個体付着しているのが潜水によって観察された.また,鹿児島で得られたビゼンクラゲにもこれが付着していることが判明し,ビゼンクラゲ類を分散の手段として利用している可能性が示唆された.1.クモヒトデ類の浮遊生物への付着現象はOphiocnemis marmorataのみで見られる珍しい現象であり,ビゼンクラゲへの付着を初めて報告した.付着母体となるのがビゼンクラゲ類に限られていることから,ビゼンクラゲ類に特有な強固な体や複雑な口腕といった形態的な特徴や,内湾性で上下運動を行うといった生態的な特徴が,付着母体になりうる要因であると考えられる.2.Ophiocnemis marmorataの鹿児島での出現は本クモヒトデの日本初記録である.日本国内では砂底での分布記録はなく,この個体が遠方よりビゼンクラゲに付着して運ばれた可能性もある.強い遊泳力を持たない海産底生動物の分散は,通常,生活史の一部である浮遊幼生の時期に行われるが,Ophiocnemis marmorataのビゼンクラゲ類への付着は,浮遊幼生以外での分散という特殊な役割を持っている可能性がある.

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そしてクモヒトデの中にはクラゲに乗って移動するものもいるのか...。がんばれよオフィオプルテウス。:ビゼンクラゲに乗って移動するクモヒトデ http://t.co/mey4lL4R

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