著者
岩谷 いずみ 向井 義晴 寺中 敏夫
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-11, 2009-02-28
被引用文献数
7

エナメル質に対して高濃度の過酸化水素水を用いて多数回の漂白処理を施した場合,表層が脱灰されると報告されている.しかし,実際の口腔内においてエナメル質は漂白処理以外の期間は常に唾液に覆われており,漂白による脱灰は唾液中のミネラル成分により修復される可能性も考えられる.本研究では多数回の漂白が与える影響についてウシエナメル質を用いて,漂白処理以外の時間は脱イオン水(DW)に浸漬した(Hw)群と,唾液をシミュレートした再石灰化溶液に浸漬した(Hr)群を設け比較した.漂白には,35%過酸化水素水を主成分とするHiLite(松風)を用い,1週間を1クールとして12クール行った.脱灰様相はTransversal Microradiographyによるミネラル喪失量(IML),および超微小押し込み硬さにより比較した.また,漂白後の再石灰化処理がエナメル質結晶の構成に与える影響について顕微ラマン分光分析を用い,漂白面,および非漂白面の表面および断面10〜300μmにおける炭酸基とリン酸基の変化を測定した.なお,漂白効果の有無は色彩色差計を用いて判定した.Hw群には,エナメル質表面から10μmの位置にミネラル密度が約60vol%の表層下病巣が形成され,12週間再石灰化液に連続して浸漬したコントロール(C)群に比較し,IMLは有意に大きな値であった.Hr群はC群と同様,脱灰,ならびに硬さの低下は示さなかった.各群に耐酸性試験(D)を行ったCD,HwD,およびHrD群すべてに表層下病巣が形成されたが,IMLは全群間で差はなかった.Hr群の表面の顕微ラマン分光分析の結果,漂白面は非漂白面に比較しリン酸基の強度が上昇していた.12クールという多数回の漂白処理においても,口腔内をシミュレートした再石灰化環境に置かれたエナメル質では,漂白により無機質が溶出した後も,周囲環境中の無機質イオンがエナメル質中に取り込まれる可能性が示唆された.また,最表層部では,その後の耐酸性に影響を与えるほどの変化ではないものの,炭酸基が減少し,リン酸基の含有量が多い安定したアパタイトが沈着する再石灰化が生じていることが確認された.

言及状況

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編集者: 左脳
2016-12-22 14:01:43 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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