- 著者
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海山 宏之
- 出版者
- 茨城県立医療大学
- 雑誌
- 茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.149-153, 2009-03
QOL(Quality OF Life)の「生命の質」という言葉はSOL(Sancity OF Life)「生命の尊厳」の対義として生まれた話である。QOLの語は倫理学説的には状況倫理説に布置して功利主義に通じ、SOLは原則倫理の側にある。QOLの考え方は医療の現場での実践的な行動に親和的であるが、価値中立的な語ではない。QOLについては、理性や能力の軽重によって生命の価値に序列がつけられるのではないかという問題点も指摘されている。またSOLの原則的な考え方は本来柔軟性を欠くものである。現実には両者の折衷的態度がとられているにせよ、QOLとSOLとは背反的存在として議論されるよりも、積極的に両立的に考えられるべきと考える。それはQOLとSOLの双方の立場が補完的に医療を支えていく倫理・哲学となり得るからである。